コラム

サイコパス(≒反社会性パーソナリティ障害)の特徴【精神病質者の脳科学】

 日常会話の中で、「サイコパス」という言葉を聞くことが多くなったかもしれない。一般的には、大量殺人犯や猟奇殺人者などがイメージされることが多く、人を誹謗・中傷、もしくは揶揄する際にも「サイコパス」がしばしば用いられる。テレビや小説で劇的に、そして過激に誇張して描かれることも多いため、その本来の意味や性質は、適切に理解されていないといえる。

【目次】
1.精神医学における、サイコパスの位置づけ
2.サイコパスの特徴
3.サイコパスの原因は何か
4.サイコパスの判断基準
5.サイコパスは何人いるのか

1.精神医学における、サイコパスの位置づけ

 サイコパスは、精神病質者の俗称である。精神医学の観点からみると、「パーソナリティー障害」のひとつに類似疾患がある。パーソナリティー障害は、対人コミュニケーションに支障をきたす障害の総称であり、10種に分類することができる。その中のひとつである「反社会性パーソナリティ障害」が、サイコパスに該当する。

【パーソナリティ障害の種類】
1.スキゾイド(シゾイド)パーソナリティ障害
⇒感情表現に乏しく、親密な対人関係を避けて自分の世界に引きこもる傾向がある。

2.猜疑性(妄想性)パーソナリティ障害
⇒不信感が強く、はっきりした根拠がないにもかかわらず、他者が自分を騙しているなどと考える。親密な人間関係を築けず、変人として扱われることもある。

3.統合失調型パーソナリティ障害
⇒奇妙な思考や行動が特徴で、自分の思考にはテレパシーや千里眼、呪いのような特殊能力があると考える。

4.反社会性パーソナリティ障害
⇒攻撃的で衝動的で、無責任な行動が多くみられる。人を騙す傾向があり、良心の呵責がない。犯罪を繰り返し行うことも多い。(一般的に「サイコパス」と呼ばれる疾患がこれにあたる。)

5.演技性パーソナリティ障害
⇒周囲の注目を引こうとして感情や考えをオーバーに表現したり、化粧や服装に凝ったりする。自己中心的で感情的な傾向がある。

6.境界性パーソナリティ障害
⇒感情が不安定で、他者に対する評価も称賛と幻滅が即座に入れ替わる。見捨てられるという不安が強く、自分に関心を向けるための自傷行為もみられる。

7.自己愛性パーソナリティ障害
⇒自分は最高で、選ばれた人間だという自負をもち、自身を誇大化してみせる。他人からの称賛を要求する傾向がある。共感の欠如も特徴のひとつとして挙げられる。

8.回避性パーソナリティ障害
⇒親しい対人関係を求めていながらも傷つくことを非常に恐れるがゆえに、他者との関係を回遊する。いわゆる「社会的なひきこもり状態」に陥る。

9.依存性パーソナリティ障害
⇒何ごとも自分で決められず、依存する相手の判断に従う。一人でいられず、恋人などとの別離を避けようとする。不安や無力感が強い。

10.強迫性パーソナリティ障害
⇒几帳面で融通が利かず、完璧主義の側面がある。他人にも完全を望むため、トラブルを起こしやすい。娯楽や友人関係よりも仕事を優先する。
(参考:「よくわかる精神医学」(ナツメ社))

2.サイコパスの特徴

 サイコパスの主な特徴として、社会的義務を顧みないことや、他者の感情に対する共感が欠如していることが挙げられる。社会規範を逸脱した無謀な行動がみられるが罪悪感や後悔を感じず、刑罰や罰則のように自身にとって不利であるはずの規則や規定が行動の枷(抑止)にならない。欲求不満に対する耐性が低く、衝動制御が機能しないため暴力行為も多くみられる。また、社会との衝突をもたらした行動に関して他者を責める傾向や、もっともらしい合理化によって正当性を主張する傾向が著しい。

 一見すると活発ゆえに魅力的にみられ、人間関係を築くことができるが、それを維持できず結婚と離婚を繰り返すことが多い。転職・無職といった社会的機能不全や育児放棄・児童虐待も生じやすい。容易に嘘をつくため、周囲にとっては信用するのが困難な相手となる。京都大学の研究チームによると、サイコパス傾向が高い場合、脳内で「嘘をつくか正直に振る舞うか」という葛藤が低下し、躊躇することなく素早く嘘をつく傾向があることが分かっている。

 上述したように、サイコパスは反社会性パーソナリティの類似疾患として捉えられている。もっとも、厳密にいえば違いもある。サイコパスは衝動性や攻撃性などの問題行動に加えて共感性や罪悪感の欠如といった内面的な側面も重視して基準が設けられているのに対して、反社会性パーソナリティ障害は問題行動のみを評価対象とされている。

3.サイコパスの原因は何か

 サイコパスになる原因としては、遺伝的要因や養育環境要因(反社会性、養育拒絶など)が指摘されている。生物学的な所見としては髄液中の5-HIAAの低下と衝動性、または攻撃性の亢進との関連が報告されている。また、画像研究から辺縁系や傍辺縁系、前頭極部の灰白質減少が報告されている。異常脳波がみられることもある。
 近年の研究では、サイコパスの要因となる情動障害が脳内の扁桃体および前頭前皮質腹内側部の器質的・機能的異常によって発生するとの仮説もあるが、詳細は未だ不明である。

4.サイコパスの判断基準

 インターネット上では、しばしば「この質問に○○と答えるとサイコパス」といったものがみられるが、サイコパスであるか否かは、こうした一問一答で判断できるものではない。

 精神医学の分野では、サイコパスであるか否かは一般的に「情動的/対人関係的側面」と「問題行動的側面」によって判断される。診断される者の中には問題行動的側面があまりみられず、なおかつ情動的・対人関係的側面が良い方向に発揮される者もいる。この場合、一般人にはできないような決断や行動をとるために社会的に成功するというケースもある。これはいわゆるホワイトカラー・サイコパスなどと呼ばれ、政治家や経営者に多いといわれている。

 こうしたサイコパスの判断には、犯罪心理学者であるロバート・D・ヘアがまとめたPCL-R(Psychopathy Checklist-Revised)が用いられる。
 以下の20項目をそれぞれ0点~20点で評定し、成人で30点を超えるとサイコパスと判断される。

【対人/情動面】
・口達者/表面的な魅力
・誇大的な自己価値観
・病的な虚言
・偽り騙す傾向/操作的(人を操る)
・良心の呵責・罪悪感の欠如
・浅薄な感情
・冷淡・共感性の欠如
・自分の行動に対して責任がとれない

【衝動的/反社会的行動面】
・刺激を求める/退屈しやすい
・寄生的生活様式
・行動のコントロールができない
・幼少期の問題行動
・現実的・長期的な目標の欠如
・衝動的
・無責任
・少年非行
・仮釈放の取消

【どちらにも含まれない項目】
・放逸な性行動
・数多くの婚姻関係
・多種多様な犯罪歴

 一説によると、生後5週間の乳児に赤いボールと人の顔をみせ、赤いボールに注目すればサイコパスの兆候がある考えられるとの研究報告もあるが、確証には至っていない。

5.サイコパスは何人いるのか

 サイコパスは、上述の判断基準を用いることである程度の判断が可能であるが、評価者によって少なからず評価に違いが生じる。厳密にいえば、サイコパス要素が極めて弱い者から極めて強い者まで連続的かつ無段階的に度合いが異なるため、正確な人数を把握することは困難である。統計上、サイコパスと認定される者の割合は全人口の0.75%であったり4%であったりと幅が広い。また、近年の研究ではCEO(最高経営責任者)の20%がサイコパスともいわれている。

【参考文献・参考サイト】
・現代精神医学事典(弘文堂)
・精神神経疾患ビジュアルガイドブック(学研)
・やさしくわかる精神医学(ナツメ社)
・日本医事新報社「精神病質者(サイコパス)とは」
・京都大学「サイコパスがためらいなく嘘をつく脳のメカニズムを明らかにしました」
・Biological Psychiatry「Reduced Face Preference in Infancy: A Developmental Precursor to Callous-Unemotional Traits?」
・Inc.「3 Unexpected Signs That Someone Is a Psychopath, According to Science」

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