脳と心の病一覧

001.アルツハイマー病
002.統合失調症
003.うつ病
004.認知症
005.パニック障害
006.パーキンソン病
007.自閉症スペクトラム障害
008.ADHD(注意欠陥多動性障害)
(以下、順次公開予定)

001.アルツハイマー病



 病名は、最初の報告者であるアルツハイマー(A. Alzheimer)に由来する。高齢者に多い神経変異性疾患で、65歳以上での有病率は3~5%、80歳以上では約20%。若い年齢での発症ほど進行経過は速い。認知症疾患の中で最大の要因を占める。

|症状

 主な症状は記憶障害。障害は少しずつ進行していく。記銘力の低下ではじまることが多いが、礼節は保たれる。患者は記憶の障害を認めるが、重視はしない傾向にある。記憶の欠失をごまかす「取り繕い行動」をとることもある。病状が進行すると記憶障害だけでなく、失語、失行、失認、実行機能の障害なども加わり、最後は寝たきりになる。

 前駆状態としての軽度認知障害(MCI)は、物忘れはあるものの日常生活には支障がない状態を指す。早期のアルツハイマー型認知症では物忘れの自覚があるが、進行すると物忘れの自覚がなくなる。

【加齢による物忘れ】
→昨夜の食事メニューを思い出せないが、きっかけがあれば思い出す。

【軽度認知障害が疑われる物忘れ】
→食事をしたこと自体を忘れる。

|原因

 アミロイドβタンパク(Aβ)というタンパク質が大脳皮質に沈着して、老人斑(ろうじんはん)が出現することが原因と考えられている。老人斑が出現すると、シナプスでの神経伝達が弱まる。また、神経原線維の変性や、アセチルコリン作動性ニューロンの脱落によって脳が萎縮していく。萎縮は海馬からはじまり、側頭葉全体、頭頂葉へと拡がる。

 誘因としては、遺伝要因(アルツハイマー型認知症の家族歴)と環境要因(加齢、喫煙、高血圧、糖尿病、頭部外傷など)が複合した多因子型疾患と考えられている。
遺伝要因にはアミロイド前駆タンパク(APP)、プレセニリン1(PSEN1)、プレセニリン2(PSEN2)の変異、アポリポタンパク(ApoE)のApoE-ε4遺伝子などがある。

|治療法

 なぜアミロイドβタンパクが沈着するかは不明であり、根本的な治療法は開発されていない。しかし、進行を遅らせる薬はある。主な治療薬はコリンエステラーゼ阻害薬3剤の「塩酸ドネペジル」「ガランタミン」「塩酸リバスチグミン」や、NMDA受容体拮抗薬1剤の「メマンチン」。アルツハイマー病では脳内のアセチルコリンが減少するため、アセチルコリンの分解を抑制するコリンエステラーゼ阻害薬は神経伝達能力の向上が期待できる。

 薬を用いない治療法としては、運動や記憶訓練などが効果的という報告もあるが「明らかに効果が実証されたもの」はない。

 近年では原因であるアミロイドβタンパクを標的とする抗体をつくり、それを薬として使用する方法などが研究されている。また、アミロイドβタンパクが合成されるのを阻害する薬も開発中である。

002.統合失調症



 思春期を中心に若年で発病する疾患。人口の約1%に発病し、男女の差はほとんどない。非常に古くから認められているが、発症メカニズムは現在でも明らかでない。双極性障害(躁うつ病)と並んで内因精神病と呼ばれる。
 かつては「精神分裂病」と呼ばれていたが、「精神」が「分裂」するという言葉の持つ響きや「多重人格(解離性人格障害)」と誤解されるなど、精神疾患に対する偏見や差別を助長する原因となっていた。2002年8月、財団法人全国精神障害者家族会連合会(全家連)と日本精神神経学会での討議を経て、「統合失調症」に変更された。

|症状

 初期には意欲低下、感情鈍麻(どんま)、思考貧困などの症状が見られる。進行すると幻覚や妄想などの変調が現れ、ちぐはぐな発言やまとまりのない行動を起こすようになる。認知症状が見られることもあるが、意識障害や知的障害は起こらない。症状が慢性化すると人格変化が見られ、社会への関心がなくなり、自分の世界に閉じこもりやすくなる。
 症状は、陰性症状と陽性症状に分類される。

【陰性症状】
・意欲低下:やる気がでない。
・注意の低下:注意力が落ち、集中力が続かない。
・自閉的な生活:1日中寝てばかりで、外出する気力がなくなる。身だしなみもだらしなくなる。

【陽性症状】
・幻聴:悪口や自分の行動を実況中継する声などが聞こえる。
・被害妄想:誰かから狙われている、監視されている、尾行されていると感じる。
・考想伝播:自分の考えが知られてしまっている、他人の考えが読み取れると感じる。
・滅裂思考:頭の中が混乱しやすく、考えがまとまらない。

|原因

 原因は不明だが、患者の脳の左上側頭回(ひだりじょうそくとうかい)と両側紡錘状回灰白質(りょうそくぼうすいじょうかいかいはくしつ)の体積が減少しており、この減少率と重症度は関連があるとの研究がある。また、脳室の拡大や、海馬・扁桃体の萎縮も報告されているが、原因は明確になっていない。
 一卵性双生児か、両親ともが統合失調症の場合に約半数という高い確率で発症することから、遺伝的要因が関与していると考えられている。また、社会生活における過剰なストレスを契機に、神経伝達物質のバランスが崩れることで生じるとも考えられている。

|治療法

 抗精神病薬による治療が中心となる。かつてはフェノチアジン誘導体やブチロフェノン誘導体などの定型抗精神病薬が用いられてきたが、現在は副作用の少ない非定型抗精神病薬と呼ばれるセロトニン・ドーパミン拮抗薬が主流になっている。薬物療法の他、精神療法、リハビリテーション、電気痙攣療法などが行われる。
 現在では、寛解に至る例が多くなっている。20~30%の患者が治癒し、40~50%の患者で中程度の症状が持続するが、社会復帰が可能な水準まで回復する。20~30%の患者で治療困難で生活水準に重大な荒廃をきたす重篤な症状が続く。

003.うつ病



 基本症状は「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」。どちらの症状も見られない場合は典型的なうつ病とはされない。外因性うつ病、内因性うつ病、心因性うつ病がある。生化学、画像検査などでうつ病の診断を確定することはできない。躁うつ病(双極性障害)と区別するために、単極性うつ病とも呼ばれる。
 うつ病の生涯有病率は5~15%で、女性は男性の約2倍。若年層に多いとされるが、日本では中高年でも頻度が高い。

|症状

 食欲の低下(もしくは亢進)、不眠(もしくは過眠)、精神運動制止(もしくは焦燥)、易疲労感(気力の減退)、無価値観、罪責感、思考力・集中力の低下、死についての反復思考を呈する精神疾患・気分障害の一種。幻覚・妄想といった精神病症状を伴う場合がある。

|原因

 原因は、完全には解明されていない。遺伝的素因のある人に、心的ストレスや身体要因が加わって発症すると考えられている。「外因性うつ病」は、脳腫瘍や側頭葉てんかん、の受け肝障害、パーキンソン病などの一般身体疾患や、薬物などの影響で二次的にうつ病の症状が現れる場合を指す。「内因性うつ病」は、「心因性うつ病」は、家族との死別などの過度の心理的負担が原因となって発症する場合を指す。発症しやすい性格としては、秩序を重視し、他者に尽くす傾向が強い「メランコリー親和型」が知られている。

|治療法

 治療は、「休養」「薬物療法」「精神療法」を行う。抗うつ薬は、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の濃度を増加させることでうつ状態を改善させる。

【旧世代抗うつ薬】
・三環系抗うつ薬:イミプラミン、クロミプラミンなど。
・四環系抗うつ薬:マプロチリン、ミアンセリンなど。

【新規抗うつ薬】
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):フルポキサミン、パロキセチンなど。
・セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):ミルナシプラン、デュロキセチンなど。

 三環系抗うつ薬は、抗うつ効果は強いが口渇、便秘、排尿障害、起立性低血圧、心血管系に対する毒性などさまざまな副作用が強く出やすい。
 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの新規抗うつ薬は、上記の副作用は少ないが嘔気や嘔吐などの消化器症状は現れやすい。

 薬物療法で治療した場合、約3ヶ月で改善が見られる。未治療でも6~12ヶ月で60~70%が改善する傾向にある。

004.認知症



(近日公開予定)

◇参考文献
●『現代精神医学事典』(弘文堂)
●『精神神経疾患ビジュアルブック』(学研プラス)
●『これならわかる!精神医学』(ナツメ社)
●『ぜんぶわかる脳の事典』(成美堂出版)
●『こころの健康診断』(ニュートンプレス)
●『脳と心』(ニュートンプレス)
●『脳と心のしくみ』(新星出版社)
●『心理学概論』(ナカニシヤ出版)

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