脳科学Q&A

Q.とにかくたくさん喋ると、すっきりした気持ちになります。何故でしょうか?

A.言語を司る「言語野」が活発になっているからと考えられます。
 言葉を理解したり話したりする言語中枢(言語野)は、左脳にあります。そして、近年の研究では左脳が「快」の感情に関係していることが分かっています。このことから、たくさん喋ることで左脳が活発に機能し、物事を楽観的に捉えやすくなっていると考えられます。

Q.「脳は全体の10%しか使っていない」と聞きましたが本当でしょうか?

A.最新の研究では、全体的に使われていることが分かっています。
 特定の活動をしていないときでも、脳の神経細胞は活発に活動しています。脳の各領域は、ひとつだけでなく複数の機能を担当していることが近年の研究で分かっています。また、ひとつの機能を実現するために複数の領域によるネットワークがつくられていることも明らかになっています。

Q.ヒトは何故、夢をみるのでしょうか?

A.明確な理由は分かっていません。
 睡眠中の脳は、起きているときの行動や記憶を再現・整理し、必要な情報を定着させることがあります。夢は、この活動にかかわる可能性があると考えられています。「昼間に覚えられなかったことが一晩眠ると覚えられた」という経験は、定着の成果といえます。

Q.風邪をひいて熱が出て寝込んだとき、怖い夢をみるのは何故でしょうか?

A.高熱によって、恐怖や不安を管理する扁桃体の活動が活発になるためです。
 調査によれば、熱にうなされて見る夢は空間の歪みや暗闇に落ちていく感覚を覚えるものや恐怖を感じる生物に遭遇するものが多い傾向にあります。怖い夢をみる原因となるのは熱そのもので、病気の種類は無関係といわれています。

Q.遠い昔に聴いていた音楽を久々に聴いたとき、当時の景色や香り、感覚を思い出すのは何故でしょうか?

A.それぞれの感覚の記憶は脳の異なる部位に保存されますが、それぞれの記憶が関連づけられて保存されるためです。
 「エピソード記憶」と呼ばれる経験の記憶は、その出来事が起こったときに活動していた脳の部位に保存されます。
 例えば、幼い頃に夏の田舎でセミの鳴き声を聴きながら太陽の陽射しを浴び、大きなクワガタを眺めながらラムネを飲んだときの記憶は、脳の特定のひとつの部位ではなく、複数の部位に保存されます。セミの鳴き声は聴覚を処理する領域に、太陽の陽射しは触覚を処理する領域に、クワガタの姿は視覚を処理する領域に、そしてラムネの味は味覚を処理する領域に記憶されます。これらは同時に蓄積された記憶であるがゆえに脳内で少なからず関連性を持ち、いずれかの記憶が呼び起こされた際に他の記憶も同時に呼び起こされることになります。この例では、セミの鳴き声を聴いたときにクワガタの姿や夏の太陽の陽射し、ラムネの味を思い出しやすくなります。

Q.『氏より育ち』という言葉がありますが、実際のところ、子どもの成長に大きな影響を与えるのは氏(遺伝子)と育ち(教育)のどちらでしょうか?

A.いずれも重要ですが、どちらがより重要であるかは、生活環境次第といえます。
 ヒトの遺伝子の数は2万3,000個ほどで、そのうちの70%が脳をつくる作業に関与しているといわれています。そして、ヒトの脳は1,000億のニューロンと500兆のシナプスによって構成されています。ヒトの脳のネットワークは複雑すぎるがゆえに、ニューロン同士の接続をどのようなものにするかを生前に遺伝子で指示することはできません。そのため、ヒトの脳は生後(または胎内にいる間)の外部要因(=環境)の影響を強く受けて形成されるようになっています。

 脳の成長やニューロンの接続は、誕生後の乳児期・幼少期の経験によって得られた情報に基づいて行われます。したがって、子どもの時代をどう過ごすかが非常に重要になります。一卵性双生児を対象とした調査によると、一方が貧しい家庭で育ち、他方が中流家庭で育った場合には、知力の発達に大きな差があったことが分かっています。しかし、一方が中流家庭、他方が豊かな家庭で育った場合には、知力の発達に大きな差はみられませんでした。
 このことから、環境(育ち)が一定水準を下回る場合には遺伝子(氏)は本来の特徴を発現しづらく、環境が一定水準を上回る場合には本来の特徴を発現しやすいということが分かります。すなわち、ある程度までは『育ち(環境)』が重要で、それ以上は『氏(遺伝子)』が重要であるといえます。
 最新研究では、ヒトの知力は50%が遺伝子(氏)の要因で決定され、残りの50%が環境(育ち)の要因で決定されると考えられています。

Q.あらゆる動物の中で最も知能が高いのはヒトだと思いますが、ヒトの脳の大きさは全ての動物の中で最も大きいのでしょうか?

A.大きいことで有名なヒトの脳ですが、他の動物と比べると決して『最大』ではありません。
 ヒトの脳は大きさでみればゾウのほうが大きく、全身の体重に占める割合では一部の鳥類のほうが大きいことが分かっています。また、賢さの基準のひとつとなるシワの数は、イルカやクジラのほうが多いことが分かっています。こう考えると、ヒトの賢さを裏付けるものを『これだ』と断定するのは難しいことなのかもしれません。

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