コラム

カプグラ症候群とフレゴリ症候群

 精神疾患の分野では、健常者には理解しがたい症状がみられることが多々ある。「カプグラ症候群」と「フレゴリ症候群」もそのひとつである。

カプグラ症候群とは

 「カプグラ症候群(英:Capgras syndrome)」は、身近な人物を見たとき、外見が瓜二つの別人とみなす形の人物誤認である。たとえば、自身の母親を見たとき、「母にそっくりだが母ではない。偽物である。」と誤認する症状がある。
 外観の同一にかかわらず対象の同一性や真正さが否定されることから「ネガティブな替え玉錯覚」とも呼ばれる。内因性、心因性、器質性のいずれの疾患にもまれながら出現する。

 この症状の原因としては、大脳辺縁系と視覚野との連携に支障が出ていることが挙げられる。

 母親の容姿に関する情報が視覚野から入ってきているにもかかわらず、感情を司る辺縁系との連携がとれないために、本来であれば感じるはずの感情や感覚が生じないことで、違和感を覚える。その結果、「あれは母ではない」という認識に至る。この場合、母親の姿が見えず、電話越しに会話をすると視覚野からの情報がないため、違和感を覚えないこともある。これは、音情報を処理する聴覚野と感情を処理する辺縁系の連携がとれているためである。

フレゴリ症候群とは

 「フレゴリ症候群(英:Fregoli syndrome)」は、一人の迫害者が様々な人物に変装し、患者の前に現れると訴える人物誤認の一形式である。統合失調症に稀な頻度で出現する。
 「フレゴリ(Fregoli)」という名称は、変装を得意とした イタリアの喜劇俳優、レオポルド・フレゴリに由来している。外観の差異にかかわらず実体の同一性を主張するという点から、「ポジティブな替え玉錯覚」とも呼ばれている。
  全く知らない人を見かけたときに親しい誰かが変装していると誤認し、外見が全く似ていなくても誤認が生じるという特徴がある。

 この症状の原因としては、「すでに知っている」という感覚を引き起こす右脳の辺縁系が活発になりすぎているからと考えられている。

 実例では、以前に交際していた恋人に常に見張られているという認識から苦しむという例がある。その見ず知らずの他人に変装をやめるよう迫ったり、警察に訴えるというケースもある。

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