コラム

【特集】宇宙・地球・生命・人類の誕生と起源、進化の137億年の歴史

ヒトの一生がおよそ100年であることを考えると、かつて類人猿が二足歩行を始めてから今日に至るまでの700万年は、途方もなく長い期間であるといえる。もっとも、地球の歴史が46億年であることを考えると、700万年という人類の歴史は極めて短い期間であるといえる。

人類の起源がどこにあるかを考える上で、生命の起源に言及することは不可避である。そして、生命の起源に言及するのであれば、地球や宇宙の起源に言及することは不可避であるといえる。ここでは、宇宙の誕生から、地球、生命、そして人類が誕生するまでの137億年の歴史について概観する。

1.宇宙の誕生、すなわち起源と進化の歴史

■137億年前 ‐ビッグバンの発生と宇宙の誕生‐



今から137億年前、極めて小さく、重く、そして密度の高い“特異点”が、内側に閉じ込められたエネルギーの圧力に耐え切れずに大きな爆発を引き起こした。いわゆる“ビッグバン”である。これが、宇宙誕生のきっかけとなった。
ビッグバンが発生した10^-43秒後には大きなエネルギーが変化し、重力が誕生した。爆発から1秒後には電磁気力と、物理法則を支配する強い核力・弱い核力が発生し、電子・陽子などの素粒子も誕生した。

ビッグバン直後の宇宙は1,000億℃もの超高温で、誕生した物質(原子核・中性子・電子・光子・クオーク)が極度に高密度であったため、光は自由に動き回ることができなかった。やがて宇宙の温度が100億℃まで低下し、核反応を引き起こすのに適した温度になった。

ビッグバンの発生から38万年が経過すると、宇宙の温度は3,000℃程度になった。宇宙の温度が低下したことにより、それまでに自由に飛び回っていた電子や陽子は結合して比較的軽い元素である水素(原子核を構成する陽子が1つ)やヘリウム(原子核を構成する陽子が2つ)などの原子が誕生した。それと同時に、光は真っ直ぐ進むことができるようになった。光が直進するようになったことから、宇宙は急速に明かりを失っていった。この期間は“暗黒の期間”と呼ばれた。再び宇宙が明るくなるためには、宇宙で最初の恒星の誕生を待つ必要があった。最初の恒星が誕生するまでの4億年間は、光が全くない暗黒の世界だった。

■133億年前 ‐星の誕生‐



爆発によって放出された粒子(電子・陽子・中性子)が互いに結びつき、原子を形成していった。こうして形成された原子(水素とヘリウム)は互いの重力に引かれ合い、超高温のガスの塊を作った。塊はやがて火の玉となり、自らの重力に潰されることのない恒星となった。
誕生した複数の恒星は互いの重力によって引き寄せられ、銀河を形成していった。星の数を増やしていった宇宙は、再び明るさを取り戻した。この時期に誕生した恒星は、“第一世代星”と呼ばれる。

水素とヘリウムによって作られた第一世代星は、中心部が高音・高圧の状態となって核融合反応を引き起こした。核融合は、化学反応とは異なって陽子と中性子の数自体を増やすため、新たに重く複雑な元素を生み出すことになった。陽子が3個の『リチウム』、陽子が4個の『ベリリウム』、5個の『ホウ素』、6個の『炭素』、さらには『窒素(7個)』、『酸素(8個)』など、陽子が26個の『鉄』までが第一世代星の核融合によって作られた。

水素からヘリウムへの核融合、ヘリウムから炭素や酸素への核融合、炭素や酸素から鉄への核融合を経て恒星が寿命を迎えると、一定の大きさを超えていれば“超新星爆発”を引き起こし、宇宙空間に様々な物質を拡散させる。この繰り返しにより、宇宙空間に重い原子が登場することになる。
拡散された重い原子が集まることで、新たに恒星が形成された。こうして形成された恒星は、“第二世代星”と呼ばれる。

2.太陽と地球の誕生、すなわち起源と進化の歴史


■46億年前 ‐太陽の誕生‐


ある第一世代星(恒星)が燃え尽きて自らの重力によって崩壊し、爆発したことによって生じたガスや塵が集まり、核融合を起こして太陽が生まれた。
太陽が誕生してから700万年ほどが経過すると、他の恒星の爆発によって生じた原子が互いに衝突を繰り返し、岩石型の惑星を形成していった。そうして形成された星の一つに、地球の基になる岩石の塊があった。

■45億6000万年前 ‐地球の成長(1)‐【地質時代区分:冥王代】


多くの微惑星が地球の重力に引き寄せられて地球に衝突し、地球の直径が2,000km程度になった。大きな微惑星が衝突した場所では惑星と地表の周辺が溶けることで、地表の一部にマグマの池が発生した。その後も隕石の衝突は繰り返され、衝突の度に地球は大きくなっていった。

■45億5000万年前 ‐地球の成長(2)‐


地球に衝突する隕石が多くなるにつれて重力が大きくなり、より多くの微惑星を引き寄せた。地球の大きさは、直径8,000km程度になった。微惑星の衝突の頻度が増すにつれて、衝突の衝撃で溶けた微惑星はマグマとなって地球全体を覆うようになり、マグマの深さが数百kmに達した。
マグマの海が深くなるにつれてマグマの成分である鉄が深く沈み、地球の中心に集まっていった。地球の中心に集まった重い鉄はやがて地球の“核”となり、鉄よりも軽い岩石は核の外側を覆うことで“マントル”となった。

当時の地球には地面や水は存在しておらず、激しく燃え続ける太陽からは多くの物質を貫通する荷電粒子が降り注いでいたため、生命体が生存できる環境ではなかった。また、高速で自転していたため1日は4時間程度だった。

■45億3300年前 ‐巨大惑星の衝突と地球磁場の発生‐


地球に“ティア”と呼ばれる火星ほどの大きさの原始惑星が衝突した。この衝突によってティアを形成していた鉄が地球の核に入り込み、地球の核と融合した。

地球の中心部に集まった液体の鉄が流動することで、地球の周辺に“地球磁場”が生じるようになった。地球磁場が展開したことにより、太陽から降り注ぐ“電気を帯びている粒子”は、地球を覆う磁力線に沿って進路が曲がるようになった。そのため、生物に有害な影響を与える放射線の一種である荷電粒子(太陽風)は地球に到達しなくなった。

■43億年前 ‐海の誕生‐


地球が誕生した当時、地球の地表は溶岩で覆われて温度は1,000℃を超えていたが、時間の経過とともに溶岩が冷えてきた。そのため、それまで岩石の中に溶け込んでいた様々な物質(水蒸気や塩素、水素、二酸化炭素)が気体となって岩石から排出された。(“脱ガス”と呼ばれる作用)
大気中に排出された水蒸気は、地球が冷えるにつれて雨となって地表に降り注いだ。雨は脱ガスによって大量に排出された塩素ガスを溶かして低地へ溜まっていった。これらが繰り返されることによって海が形成され、地表の70%を占めた。

海が形成された後、海水から水蒸気が立ち上がり、上空で冷えて雨となって落下して海へと戻る過程が繰り返された。上空へ昇った水蒸気は大気中の塩素と結合し、酸性を増した雨となり、再び落下した。強い酸性の雨は陸上の岩石からナトリウムやカルシウムなどを溶かし、海へ運んでいった。これにより、酸性が強かった海にナトリウムが混じることで中和され、塩化ナトリウムとなって酸性の強かった海が塩分の多い海水へと変化していった。なお、海水には塩素や二酸化炭素だけでなく、地球の内部から脱ガスによって噴き出したマグネシウムやカリウム、硫黄などの物質も溶け込んでいった。こうした成分は、後に登場する羊水や人体を構成するのに不可欠な物質となった。

こうして43億年前頃には、地球に『核』・『マントル』・『地球磁場』・『大気』・『海』が登場し、生物が棲むことのできる環境に近づいた。

3.生命の誕生、すなわち起源と進化の歴史

■38億年前 ‐地球上ではじめての生命の誕生‐【原始生代】

海水が海底下の数kmの深さに浸透し、マグマによって熱せられた岩に触れることで350℃に達する熱水が噴出されるようになった。熱水と岩との間では様々な化学反応(還元反応)が生じ、水素イオンや硫化物イオン、メタン、二酸化炭素などの様々な金属のイオンが発生した。こうした物質は、後に生物がエネルギー源として利用できる成分となった。
このような環境の中で、海底では全ての生物の共通祖先となる“メタン生成細菌(単細胞のバクテリア)”が誕生した。

メタン生成細菌は生存に酸素を必要とせず、海底で食料となる化学物質(有機物や硫化水素)を摂取して活動していた。メタン生成細菌は1つの細胞からなる“原核生物”であり、大きさは0,01mm程度だった。

■27億年前 ‐酸素を生み出す“シアノバクテリア”の登場‐【新始生代】


当時の地球上にはメタンや二酸化炭素などの温室効果ガスが豊富にあり、酸素分子はほとんど存在しなかった。また、メタンの化学反応によって生じる微粒子が大気中に大量に存在していたため、空は赤く霞んでいた。
食糧を確保できなかった一部のメタン生成細菌は、突然変異によって従来の食糧の確保を必要としない方法を身に付けた。この方法により、太陽光を利用して二酸化炭素と水を分解し、エネルギーと酸素を作り出すこと(=光合成)を可能とした。光合成を可能とした単細胞バクテリアは、“シアノバクテリア(藍藻)”と呼ばれている。
メタン生成細菌が海底で活動していたのに対して、シアノバクテリアは太陽光を活用するために海面の近くで活動するようになった。シアノバクテリアが生み出す酸素は海中に放出され、鉄イオンと結合して酸化鉄が生成された。こうした反応が繰り返されることにより、海中の環境は変化していった。酸素と結合する鉄イオンが海中からなくなると、酸素は大気中にあふれるようになった。この活動が5億年以上繰り返されることにより、大気中に酸素が蓄積されるようになった。

放出された酸素は大気中のメタンと反応し、大気中のメタンは減少していった。これによりメタンとの化学反応によって生じる微粒子が減少し、空は青く澄みわたるようになった。また、大気を満たす酸素が大気圏上空でオゾン層を形成した。このオゾン層が太陽からの有害な紫外線を遮断することにより、地球は生物が地上で活動できる環境になった。

■22億年前 ‐気温の低下による“全球凍結”‐【古原生代】


シアノバクテリアが活発に光合成を行うことで、大気中の二酸化炭素が大量に吸収された。二酸化炭素は温室効果を持っていたため、大気中の二酸化炭素の減少は地球の気温を低下させた。地球の気温が低下した結果、全ての海と陸が雪と氷で覆われる“全球凍結”状態となった。

シアノバクテリアが引き起こした全球凍結により、シアノバクテリアは氷の下に閉じ込められた。それにより、光合成の量は減少した。なお、全球凍結状態の中で、ごく一部の火山だけが活動を継続していた。こうした火山活動による地熱で生じた温水が、当時の生命体の避暑地・避難所となった。

光合成が行われなくなった地球上では活火山が排出するガスに含まれる二酸化炭素が大気中に蓄積されるようになった。一定期間が経過すると、大気中に蓄積された二酸化炭素の温室効果によって凍結状態が解消に向かうようになった。大気中の二酸化炭素が増加して氷が溶け出したことで、再びシアノバクテリアは光合成を行うようになった。

■21億年前 ‐“真核生物”の誕生‐


シアノバクテリアの活動により、海中や大気中の酸素は急増していった。そんな中、一部の原核生物が酸素呼吸を行う進化を遂げた。酸素はエネルギーを多く含む物質を作り出すことが可能であるため、酸素呼吸をするようになった生物は従来の方法よりも最大で10倍もの効率でエネルギーを得られるようになった。これにより、海中に溶けた酸素を吸収し、活発に活動・増殖していった。この原核生物は酸素と栄養を取り込むことで、水素や二酸化炭素、酢酸を排出していた。この生物と共生関係にあったのが、水素や二酸化炭素、酢酸を取り込んでメタンを排出するメタン生成細菌である。

あるとき、メタンを発生させる原核生物であるメタン生成細菌が、酸素呼吸する生物を体内に取り込んだ。これがきっかけとなり、かつては独立していた酸素呼吸生物が、後に生物の体内で酸素を消費して栄養を分解してエネルギーに変換する器官である“ミトコンドリア”になった。こうして、ミトコンドリアを持つ生物は体長1mmほどの“真核生物”としての単細胞生物に進化した。

真核生物の中には、光合成を行う原核生物を取り込むことで光合成を行う器官である“葉緑体”を持つ生物も登場した。葉緑体を持つ真核生物は、後に植物へと進化することになる。

バクテリアは活動を繰り返していく中で、他のバクテリアを摂取(丸ごと吸収する)するようになった。これにより、従来よりも効率的にエネルギーを摂取することが可能になった。こうして、それぞれのバクテリアの間で“捕食する者”と“捕食される者”との関係が生じていった。この関係が生じたことにより、その後は“いかにして捕食するか”、“いかにして捕食されないか”という生存競争が繰り広げられるようになった。

■19億年前 ‐最古の超大陸の出現‐



現在の北アフリカを中心に、3つの大陸が集まって地球上で初めての超大陸となる“ヌーナ大陸”が形成された。

■15億年~10億年前 ‐2度目の超大陸の出現‐【中原生代】


地球上で2度目の超大陸となる“パノティア大陸”が形成された。

■9億年~7億年前 ‐超大陸“ロディニア”の出現‐【新原生代】


南半球の赤道付近に大陸が集まり、超大陸の“ロディニア”が形成された。この時代には陸地に生物や植物が存在せず、岩や砂地の大地が広がっていた。
風雨に浸食された大地からは、物の栄養素となる“リン酸塩”などが沿岸の海に流れ込んでいた。海中に流れ込んだリン酸塩は、後に海中の生物が進化するために必要な養分となった。

■7億年前 ‐二度目の全球凍結‐


大陸が一つにまとまってロディニア大陸が形成されていたため、内陸部では乾燥し、寒冷化した気候が広がっていった。それに合わせて、火山活動も低下していった。また、雨が大気中の二酸化炭素を溶かし、二酸化炭素を海に蓄積させた。これにより大気中の二酸化炭素濃度が低下し、地球全体が寒冷化することになった。
寒冷化が進むにつれて、極地方で作られた氷河は南下していった。太陽熱は光に反射されるため、地球上で氷河の表面積が増えることで地球に吸収される太陽熱は減少していった。氷河の南下とともに太陽熱の吸収率はさらに低下し、氷河が緯度30度周辺にまで到達すると、氷河は加速度的に成長し、赤道を覆うようになった。その結果、気温は赤道付近で-50℃、極地方では-90℃になった。
寒冷化の影響で氷の厚さは海中で1,000m、陸上で3,000mになった。厚い氷で覆われた海ではシアノバクテリアによる酸素の供給がなくなるために酸素の量も低下し、多くの生物が絶滅の危機に瀕した。生き残った生物は、割れた氷の隙間から太陽光を吸収して生き延びていた。また、凍結を免れた一部の火山の周囲や、海底の熱水噴出孔の周囲でも生物は生き延びていた。

凍結を免れた火山から放出される二酸化炭素は、大気中に少しずつ蓄積されていった。光合成を行う生物の大半が氷に閉じ込められている環境では大気中の二酸化炭素の量が減少しないため、大気中の二酸化炭素はその濃度を高めていった。その結果、二酸化炭素による温室効果で地球は温暖化し、地球を覆っていた氷河は赤道周辺から溶け出した。なお、大気中に二酸化炭素が蓄積して温暖化効果が生じて全球凍結が終わるまでに、1000万年以上の年月が必要となった。

■6億3000万年前 ‐多細胞生物の誕生‐


シアノバクテリアの活動が活発になるにつれて、海中の酸素濃度は急増した。
酸素は体内の栄養を分解して大きなエネルギーを取り出すために欠かせない元素であったが、細胞自身を傷つける性質も持っていた。この点、細胞同士が集まってひとかたまりになって酸素を共有することで、身体の表面にある細胞以外は過剰な酸素にさらされることを回避できた。この原理が後に、多細胞生物の発生につながった。

多細胞生物になるためには、細胞同士を接着させるコラーゲンが必要となる。コラーゲンを生成する際には多くのエネルギーが必要であったが、海中の酸素が急増したことでコラーゲンを生成することが容易となっていた。こうして複数の単細胞生物が集まり様々な機能を持つようになったことで、地球上で初めての多細胞生物が誕生した。

■5億6500万年前 ‐有性生殖の登場‐


当時のバクテリア(単細胞生物)の生殖方法は、自身を複製する(細胞を分裂させる)“無性生殖”だった。無性生殖の特徴は、仕組みが単純であると同時に、常に親と同じ子孫が誕生する点にある。 単細胞生物は、多細胞生物へと進化する中で“性”を獲得し、“有性生殖”を可能とした。

有性生殖の始まりは、あるバクテリアが他のバクテリアに捕食された際、突然変異によって消化されず、自身を捕食したバクテリアの核と結合したことにある。この突然変異により、DNAの“二重らせん構造”が誕生した。二重らせん構造は生殖の過程で2本に分解し、それぞれが“精子”と“卵子”に含まれるようになった。この精子と卵子が結合することにより、2体の親の遺伝情報を持つ新たな二重らせんが誕生するようになった。
有性生殖では、“減数分裂”によって半分に分かれたオスとメスの細胞が受精を行って新たな生命が誕生する。構造や仕組みが複雑であるために無性生殖のように頻繁に行うことはできない反面、誕生する生命は必ず親とは異なる生物になるという特徴がある。有性生殖では常に異なる遺伝子情報が結合するため、新しく誕生するバクテリアはそれまでのバクテリアとは異なり多様なものとなった。この有性生殖を期に、進化は多様化していくことになった。

■5億6000万年前 ‐軟体性の水中生物の登場‐【新原生代エディアカラ期】


柔らかな組織だけで構成される生物が登場し始めた。骨や殻、歯、足、眼、または複雑な感覚器官を持たない点が特徴であり、こうした生物は“エディアカラ動物群”の生物に分類される。
エディアカラ動物群の生物は眼を持たないために互いの存在に気付きにくく、他の生物を襲ったり避けたりすることは少なかった。動けない生物は海中を漂う有機物を摂取し、動ける生物は海底に堆積したバクテリアを摂取していた。代表的な生物としては、“ディッキンソニア”や“ヨルギア”、“キンベレラ”、“チャルニア”などが挙げられる。

・ディッキンソニア



(出典:古世界の住人
エディアカラ期の最大級の生物。大きなものは全長120cmを越える。

・ヨルギア



(出典:古世界の住人
体の中心線に対して、左右が非対称になっているのが特徴。

・キンベレラ



(出典:古世界の住人
殻を持った軟体動物。海底の表面のバクテリアなどを食べていたと考えられている。

・チャルニア



(出典:古世界の住人
高さ2mに達する海草。動物でもなく植物でもないベンド生物の一種と考えられている。

■5億4100万年前
‐歯・骨・殻、トゲ、外骨格そして眼の登場‐【古生代カンブリア紀】


多細胞生物の進化が多様化し、歯や骨、殻、トゲ、外骨格などを持つ生物が現れた。また、地球上で初めて眼を持つ、厚く硬い殻に覆われた“三葉虫”や、獲物を捕らえるための長い1本の器官と5つの眼、そして扇型の尾を持つ“オパビニア”などが登場した。他にも、背中に7対のトゲを持つ“ハルキゲニア”や、うろこで全身を覆い、14本ほどのトゲと構造色を持つ“ウィワクシア”、体長1mを超え、2本の腕で海中の獲物を捕らえる“アノマロカリス”などが登場した。アノマロカリスはその巨大さから、食物連鎖の頂点に立つ最初の百獣の王となった。
多細胞生物の多様化により、生物は昆虫の祖先となる節足動物と、人類の祖先となる脊椎動物に分かれていった。

・オパビニア



(出典:古世界の住人
5つの眼を持つ節足動物。頭から長く伸びた器官で捕食していたと考えられている。

・ハルキゲニア



(出典:古世界の住人
「まぼろし」という意味を持つハルキゲニア。未だ不明確な点も多い生物。

・ウィワクシア



(出典:古世界の住人
全身がウロコに覆われており、左右で対になった長いトゲが特徴。CDの裏面のように、見る角度によって色が異なる「構造色」をしていた。

・アノマロカリス



(出典:古世界の住人
カンブリア紀で最も繫栄した生物。食物連鎖の頂点に立っていた。

■5億2400万年前 ‐脊椎動物の登場‐


人類を含むあらゆる脊椎動物の共通の祖先となる初期の魚である“ミロクンミンギア”が登場した。

(出典:古世界の住人
現在の研究では最古の魚類であったと考えられている。体長は3cmほど。

■5億2000万~5億1000万年前 ‐眼が促す進化‐


眼が誕生したことにより、生物は互いを発見しやすくなった。これにより、捕食するか捕食されるかの生存競争が激しさを増した。生存競争の激しさは、それぞれの生物の進化を促した。素早く襲う・逃げるために筋肉が発達し、骨格や殻は大きな利点となった。襲う側は強力な歯や追跡用の足・ヒレを獲得し、襲われる側は防御用の殻やトゲ、逃走用の足・ヒレを獲得した。これにより、生物は高速での移動が可能となった。

■4億7000万年前 ‐植物の陸上進出‐【古生代オルドビス紀】


シアノバクテリアが行う光合成によって供給される酸素が海中を満たし、地上へあふれ出した。地表を満たした酸素はオゾン層を形成し、地上でも生物が生息できる環境が実現した。
当時、海中には赤い色素を持つ“紅藻”や、緑の色素を持つ“緑藻”が生息していた。緑色植物が光合成に利用する波長の光は水中よりも浅瀬に多く、浅瀬よりも陸上に多いため、それまで海中に生息していた緑藻は効率的な光合成を実現するため陸上に進出した。これにより、海中にいるときよりも効率的に光合成によって太陽光を得られるようになった。

■4億6000万年前 ‐節足動物の台頭と支配‐


海中では、硬い殻を持つ節足動物が進化を遂げていた。硬い殻によって身を守るだけでなく、殻に筋肉をつけることによって素早く力強い動きが可能となった。当時、海中(浅海)の生態系の頂点に君臨していたのは、体長2mを超える“ウミサソリ”だった。

(出典:古世界の住人

一方、人類の祖先となる脊椎動物の魚類は、最大で数十cm程度だった。その多くは顎を持たず、海底の泥を吸い込んで餌を濾して食べていた。

■4億4300万年前 ‐第一次大量絶滅‐【古生代シルル紀】


海面変動などが原因となり、生物の大量絶滅が生じた。

■4億3300万年前 ‐最古の陸上植物の登場‐


海中で生息していた緑藻が陸上に進出した後に、最古の陸上植物である“クックソニア”が登場した。

(出典:古世界の住人
高さは数cmで、浅い水辺で繁殖していた。こうした環境で光合成を行う際、水中にある二酸化炭素だけでは不十分だったため、空気中の二酸化炭素を利用せざるを得なかった。陸上に進出後は、陸上の環境に適応した性質を獲得していった。当時の植物には根や葉はなく、水分や養分を隅々まで行き渡らせる配管器官もなかった。このような植物は、“非維管束植物”と呼ばれる。

最古の陸上植物が登場後、コケ植物やシダ植物も上陸し、シダ植物は上へ伸びるように成長し、コケ植物は横へ広がるように成長していった。

■4億3000万年前 ‐水中の節足動物の上陸‐


水中に生息していた節足動物である“アパンクラ”などが上陸した。

(出典:古世界の住人
上陸した節足動物は後に、先端の体節のいくつかが頭部になり、少なくとも一対の脚が触覚器に変化し、後方の体節が胸と腹に分かれることで様々な種類の昆虫へと進化していった。

節足動物は、魚類が両生類に進化して陸上に進出するよりも早く陸上に進出した。魚類が陸上に進出する場合、エラ呼吸から肺呼吸へと進化する必要があり、また、ヒレを手足に変化させる必要があった。この点、節足動物は身体構造を大きく変化させる必要がなかった。節足動物は軽くて強固な有機質の外骨格によって身体が覆われていたため、陸上の乾燥や重力から身を守ることができた。陸上で進化した節足動物は後に、体液の蒸発を最小限に抑えて呼吸できる構造として気門を獲得した。

■4億2000万年前 ‐顎を持つ生物の登場‐


顎を持たなかった魚類の中に、顎を持つ種(しゅ)が現れるようになった。顎の獲得によって口をより大きく開けられるようになり、口の中に多くの食物を含めることが可能となった。顎を持った魚類は進化を遂げ、大型化するものもいた。“ダンクルオステウス”のような大型の生物は、最大で10mほどにまで成長した。

(出典:古世界の住人
魚類が進化する一方で、ウミサソリのような大型の節足動物は衰退し始めた。

■4億1700万年前 ‐肺魚の登場‐【古生代デボン紀】


魚類”や、骨格の大部分が硬骨から構成される“硬骨魚類”が出現した。硬骨魚類は、条鰭(じょうき)類と肉鰭(にくき)類に分かれた。条鰭類は後にアジやサバ、マグロへと進化し、肉鰭類は肺魚やシーラカンスとへ進化していった。肉鰭類は鰭(ひれ)の中に、後の両生類の足となる骨格を持っており、両生類へと進化していった。

当時の海中には多くの生物が存在しており、生命の危険も多かった。そこで魚類(肉鰭類)の一種である肺魚はエラを進化させることにより、従来の呼吸方法である“海中の酸素を摂取する方法”ではなく“大気中の酸素を摂取する方法”を身に付け、陸へと進出した。肺魚が持つ高度に進化した4枚のヒレは、陸上を歩くのに適していた。

■4億年前 ‐“原始維管束植物”の登場‐


陸上へと進出した緑藻は、細胞壁を強くする高分子化合物であるリグニンによって細胞壁全体の強度を高め、細胞の表面から水分が蒸発することを防ぐ進化を遂げた。これにより、陸上の乾燥と重力の課題を克服することができた。リグニンは水分やミネラルを植物全体に運ぶ管の材料にもなり、葉を持たない“原始維管束植物”が水辺で繁栄した。維管束によって水分・養分を吸い上げることが可能となり、体を支えることも可能となった。リグニンが豊富に含まれる植物は丈が長く、強度が高い特徴がある。また、干ばつに強いため直立したまま生息し続けることができる。こうして進化した植物の中には、高さが50~60cmになる植物もあった。なお、最初にリグニンを生み出した植物は“リニア類”と呼ばれ、後に全ての木の祖先となる。
植物が繫栄すると、水を求める根によって地表は掘り返され、枯れた植物が地表の微生物に分解されるようになった。これにより、陸地は有機物に富んだ粒子である土で覆われていった。

■3億8500万年~3億6000万年前 ‐魚類から両生類(四肢動物)への進化‐

・3億8500万年前:ユーステノプテロン(魚類:肉鰭類)


(出典:古世界の住人
魚類が進化・多様化し、強固な骨を軸として筋肉のついたヒレを持つ肉鰭類が登場した。
肉鰭類の代表格としては、“ユーステノプテロン”が挙げられる。ユーステノプテロンの身体は流線型で、胸ビレ、背ビレ、腹ビレ、尾ビレがついていた。ヒレの中には陸上四足動物と同じ大腿骨、腓骨、脛骨の3本の骨があったが、頭骨とヒレが直接つながっていたため、四肢動物の骨格とは大きく異なっていた。

・3億8000万年前:パンデリクティス(魚類:肉鰭類)



(出典:古世界の住人
頭部が平たく、眼が頭の上についている“パンデリクティス”が登場した。後の陸上の四肢動物と顔つきが似ている特徴があった。

・3億7500万年前:ティクターリク(魚類:肉鰭類)



(出典:古世界の住人
肺魚が持っていた4枚のヒレが進化し、手首と肘と肩がついた四肢を持つ動物である“ティクターリク”が登場した。ヒレの中に、陸上動物の手首のような可動性の骨格を持つようになった。また、首のような特徴や、肩・肘なども持っていた。
ティクターリクには魚の面影があったが、肉質のヒレを持つ肉鰭類と次の進化の段階である四肢動物の特徴を合わせ持っていた。陸で身体を支えたり、浅い沼で這ったりするのに適した身体つきをしており、成長すると3mになった。

・3億7000万年前:アカントステガ(両生類)



(出典:古世界の住人
四本の足を持つ“アカントステガ”が登場した。肺呼吸が可能だったが足の骨格は弱く、水中で生活していた。ヒレの中には指となる骨があったが、薄くて弱いため陸上では体重を支えることができなかった。アカントステガの四本の足は歩行用ではなく、水中で枯れ木などの障害物をかきわける際に使用されていた。体長は60cm程度。

・3億6000万年前:イクチオステガ(両生類)



(出典:古世界の住人
陸上に植物や昆虫しかいなかった時代に、背骨を持つ脊椎動物として初めて、魚の面影のない四肢動物である両生類の“イクチオステガ”が上陸した。イクチオステガは、陸上で活動するためにエラ呼吸から進化した肺呼吸を獲得した。また、陸上の重力に耐えられるように全身の骨格を強固なものにする必要性から、首や肩・腰を獲得し、四本の足を持った。首と肩を獲得したことによって頭骨とヒレ(腕)が離れている点が特徴だった。手首や指の骨格が強固だったため、陸上での歩行が可能だった。全長は1m~1,5m程度。最初の真の四肢動物となった。

■3億7000万年前 ‐第二次大量絶滅‐


気候変動や海面変動が原因となり、大量絶滅が発生した。

■3億5850万年前 ‐植物の繫栄‐【古生代石炭紀】


レピドデンドロン(鱗木)などの植物が繫栄した。レピドデンドロンは幹の直径が最大で2m、高さが40mほどになった。葉を持たなかったために光合成のほとんどを、幹を覆う鱗片と枝に生えた緑色のトゲに頼っていた。

(出典:古世界の住人
このような初期の木々は数百万本規模で群生していた。枯れた後は大半が沼地に沈んで数百万年かけて圧縮されて硬くなり、熱と圧力によって化学変化を起こして石炭へと変化した。

■3億3500万年前 ‐土の登場と植物の多様化‐


陸に進出した生物の中には、シアノバクテリアから進化した木や草のような植物を養分として土に変える生物もいた。この生物の登場により、陸上が多くの土で覆われることになった。土には次第にミネラルや有機物が豊富に含まれるようになり、植物の進化は多様化していった。

■3億1500万年前 ‐陸上爬虫類の登場‐


魚類から両生類への進化が完了した後、両生類は長く地上を支配し、地上で最も大きく最も獰猛な生物になったものもいた。とはいえ、両生類には弱点があった。両生類は肺呼吸を補うために皮膚呼吸を行う必要があるため、表皮は柔らかく、湿った状態を保たなければならない。また、産卵は水中で行い、孵化するまで水が不可欠であった。そのため、水辺を離れて生息することはできなかった。こうした特徴は、次第に変化する自然環境の中では不利に作用することがあった。

年間5cm~10cmの大陸の移動によって1億年で1万km移動したことで、大陸が集まって海が遠くなった。これにより内陸部の気温は高くなり、乾燥気候や干ばつが続くことで深刻な問題となった。産卵のために水辺に移動する必要がある両生類は、海岸や大きな湖の付近にしか棲むことができなくなった。

環境の変化の中、水辺で生活を始めた両生類の頭蓋骨に変化が見られた。これまでの両生類の頭蓋骨には眼と鼻の孔しか開いていなかったが、眼の後ろに“側頭窓”と呼ばれる孔が開いた生物が登場した。側頭窓の登場により、その周囲に強力な筋肉が付着して強く噛む力が得られたと同時に、顎を自由に動かせるようになった。

側頭窓の獲得は、生物によって1つだけの場合と2つある場合があった。側頭窓が1つの生物は“単弓類”と呼ばれ、2つの生物は“双弓類”と呼ばれる。双弓類の中からは、後に爬虫類へと進化するものが現れた。
両生類から進化した爬虫類の皮膚は水分を通さなかったため、気温が高くなっても体内の水分は蒸発せず、脱水症状に陥る危険性は低かった。また、両生類から爬虫類へと進化する過程において、頭蓋骨や皮膚だけでなく卵にも変化が見られた。爬虫類の卵は水を通さない固い外殻(卵殻)を持ち、内部では羊膜が肺を守り、成長に欠かせない栄養分が卵黄として用意されるようになった。それまでの両生類の卵は水中になければ乾燥して死亡していたが、卵殻と羊膜を獲得することで乾燥に耐えられるようになり、水辺を離れた生活が可能となった。子どもは十分に育ってから誕生し、誕生した直後から乾燥した環境で生きていくことができた。こうして爬虫類は、初めて陸上で産卵が可能となった生物となった。
3億1500万年前には、陸上で卵を産む最古の爬虫類である“ヒロノムス”が登場した。体長は20cm程度。

(出典:古世界の住人

■3億年前 -超大陸の誕生-


南半球に大陸が集まり、“ゴンドワナ超大陸”が形成された。

(出典:古世界の住人

■3億年前 -昆虫の巨大化-


植物は、光合成を行う際に酸素を消費する。植物が枯れると微生物が酸素を消費して植物を分解するため、植物の成長と分解が同時に発生しているのであれば、酸素濃度は一定に保たれる。しかし、この時代では倒れた植物の多くが湿地に埋没したため、微生物に分解されることはなかった。微生物が植物を分解しないために、大気中の酸素が消費されることもなかった。その結果、大気中の酸素濃度が高まっていた。こうした高い酸素濃度の影響から、2mを超えるムカデである“アースロプレウラ”や、70cmを超えるトンボの“メガネウラ”が登場した。植物や昆虫が大きく成長する反面、後に恐竜の祖先にあたるトカゲなどの爬虫類は、体長30cmほどだった。なお、この時代に埋没していた植物は、その後3億年の歳月を経て石炭となった。

■2億8000万年~2億6000万年前 ‐人類の遠縁・ディメトロドンの登場‐【古生代ペルム紀】


単弓類(側頭窓が1つの生物)の中で、最も成功した種といわれる“ディメトロドン”が登場した。ディメトロドンの特徴は、背中の大きな帆にあった。帆に熱を集めることによって、他のどの動物よりも早く体温を上げて活発に活動することができた。

(出典:古世界の住人
ディメトロドンは、後に登場する哺乳類の特徴である“温血性”を獲得していた。温血動物は、周囲の温度に関係なく体温を一定に保つことができるため、夜間でも狩りに出かけることができた。また、冷血動物が活動する時間を避けて食糧を探すことができた。こうした要因から、ディメトロドンは繫栄していった。

■2億5200万年前
‐第三次大量絶滅(ペルム紀大量絶滅)【ペルム紀→三畳紀】‐


全ての大陸が一ヶ所に集まり、超大陸“パンゲア”が形成された。パンゲアの誕生により、南極付近にあったゴンドワナ大陸が北上し、それまでゴンドワナ大陸を覆っていた氷床が消滅した。これが原因となり、地球は急速に温暖化した。気候と海流が劇的に変化し、激しい季節風が吹く、暑く乾燥した環境へと変化していった。
巨大な大陸が衝突することで火山の噴火も増え、その勢いも増した。噴火の高さは、2,000mに達することもあった。現在のロシア北部に位置する超火山がかつてない激しさで噴火し、シベリアの20万平方kmの土地が溶岩で埋め尽くされた。噴火は100万年以上にわたって続き、連鎖的に災害を引き起こした。
噴火によって猛毒の灰が噴き上げられ、広い範囲にわたって刺激性の毒を含むスモッグが覆った。数日かけて噴煙が高く上がり、上空の強い風がスモッグを他の範囲にまで運び、世界中に広まった。地球全体がスモッグに覆われたことで太陽光が遮られ、昼夜を問わず暗闇に包まれた。闇に包まれた地表の気温は低下し、極寒の世界となった。厳しい寒さは50年程度にわたって続いた。

空中に漂っていた火山灰が収まると、次に噴火によって放出された大量の二酸化炭素(温室効果ガス)が気温と海水温を上昇させた。海水温の上昇により、海底に閉じ込められていたメタンハイドレートが不安定になってメタンガスが噴き出した。メタンガスによって海面は激しく泡立ち、数十トンものメタンガスが大気中に放出された。二酸化炭素を上回る温室効果作用を持つメタンは、気温をさらに高めた。
気温の上昇によって温められた海水は、大気中の酸素を吸収しにくくなった。酸素濃度が低下した海中では有害な硫化水素がその比率を増していくため、海生生物の大量絶滅を引き起こした。また、増加する硫化水素はやがて大気中にあふれ出し、陸上の生物も死滅させることになった。さらに、大気中に昇った硫化水素はオゾン層を破壊したことで、それまでオゾン層が吸収していた紫外線が地上に降り注ぐようになり、地上の生物はますます減少していった。こうした環境の変化により、地球上では全生物種の96%が絶滅した。

生物種の96%を絶滅させた大量絶滅を生き抜いたのは、身体の小さなバクテリアなどの細菌やキノコなどの菌類、そして、昆虫だった。海中では大型生物のウミサソリや、5億4000万年前から3億年にわたって生息し続けた三葉虫が姿を消した。陸上では大型トンボのメガネウラや両生類、爬虫類も姿を消した。
陸上で生活していた四肢動物で絶滅を免れたのは、単弓類の“リストロサウルス”だった。

(出典:古世界の住人
リストロサウルスは後に、より哺乳類に似た“トリナクソドン”に進化した。

(出典:古世界の住人
トリナクソドンは猫ほどの大きさで原始的な体毛で覆われており、昆虫や小動物を食していた。温血動物だったため、昼でも夜でも狩りをすることができた。このトリナクソドンは、子育てを行った最初の動物といわれている。

■2億3000万年前 ‐恐竜の登場‐【中生代ジュラ紀】



リストロサウルスが大陸全土で繫栄していた中、新しい爬虫類である恐竜が登場した。
この時代の気候は概ね温暖で、海水は深層でも15~20℃と高かった。海面は高くなり、地球は水浸しで海岸から数百kmにわたって浅瀬が続いていた。こうした恵まれた環境から、恐竜は巨大化していった。
恐竜は胴体の真下に四肢があり。これまでの動物には見られない特徴があった。胴体の真下に四肢があることから、這うのではなく歩くことが可能だった。これまでの生物には見られなかった二足歩行が可能な種も現れた。恐竜は大型のものが多く、平均体重が850kgほどあった。大きな身体を持っていたために長い距離を速く移動することができ、恐竜は様々なタイプに進化した。
このような恐竜に対して、当時の哺乳類の体長はネズミやリスのように小さかった。

■2億2500万年前 ‐最古の哺乳類の登場‐


最古の哺乳類といわれる“アデロバシレウス”が登場した。アデロバシレウスは哺乳類だが、繁殖は産卵によって行われていた。体長は10cm程度と小柄だった。

(出典:古世界の住人

■2億100万年前 ‐第四次大量絶滅‐


隕石の衝突、火山活動、気候変動などにより、大絶滅が発生した。

■2億年前 ‐動物・植物の大型化‐


植物へと進化したものが現れた。裸子植物の繫栄によって、大きな森林が形成されるようになった。裸子植物の多くは常緑樹であり、常に新鮮な葉をつけていたため食植性の動物にとっては豊富な栄養源となった。温暖化によって植物が巨大化し、栄養が豊富になることによって、草食恐竜が巨大化していった。草食恐竜が巨大化することによって、それを捕食する肉食恐竜も巨大化しなければ大型の草食恐竜を捕食することができないため、肉食恐竜も大型化するという“共進化”が生じた。

■2億年前 ‐大脳新皮質の登場‐【中生代白亜紀】


食糧を求めて夜間に活動を始めた哺乳類の“ハドロコディウム”の脳が進化し、大脳新皮質が形成され始めた。この大脳新皮質の登場により、哺乳類は様々な感覚を情報として脳内でまとめることが可能となった。

■1億6000万年前 ‐胎盤を持つ哺乳類の登場‐


子どもを卵で産むと恐竜などの外敵の餌になる危険性が高かったため、体長10cm程度の哺乳類である“ジュラマイア”は子どもを胎内で十分に育ててから産むことができるように進化を遂げた。

(出典:古世界の住人
あらかじめ母体の中で子どもを成長させてから産み落とすという出産方法が実現したことによって1度に産まれる子どもの数は少なくなったが、子どもは生まれてからすぐに動き回ることができたため生まれてからの生存率は高くなった。

■1億5000万年前 ‐哺乳類の大脳新皮質の発達‐


超大陸パンゲアが分裂することにより、激しい火山の噴火が引き起こされた。地中からは多くの二酸化炭素が放出されたため、二酸化炭素濃度は現在の5倍程度になった。高い二酸化炭素濃度は植物の成長速度を速めて巨大化を促したが、その一方で栄養素は乏しくなった。そのため、恐竜は多くの植物を摂取する必要があった。その結果、体長が30m、寿命が100年を超える“スーパーサウルス”などが登場した。

(出典:古世界の住人
恐竜などの爬虫類が巨大化していったのに対して、哺乳類の体長には大きな変化は見られなかった。最古の哺乳類といわれるアデロバシレウスの誕生から7000万年が経過して登場した哺乳類の“ラオレステス”は、体長が15cmほどだった。

ラオレステスのような哺乳類は、餌を得るためには恐竜が活動を停止した夜間に活動するしかなかった。体毛を持つラオレステスは体毛を持たない恐竜よりも夜間の活動に適していたが、ラオレステスにとっては明かりが乏しい夜間に食糧となる昆虫を捕まえることは困難だった。そのような環境の中で、周囲の音を聴き分けることができるよう耳が進化した。鼓膜とつながっている“ツチ骨”と“キヌタ骨”を獲得したことにより、音がそれらの骨を伝わることで振動が大きくなって小さな音や幅広い音が聴こえるようになった。こうした骨の出現は、哺乳類だけに共通した特徴となった。
夜間に活動するようになった哺乳類は複雑な音を聴くことにより、大脳新皮質を進化させ、その機能を高めていった。恐竜などの天敵が近づきその姿が見えると、その情報が視覚として脳に送られると同時に、地面が揺れることで触覚として情報が脳に送られ、近づいてくる足音は聴覚として脳に送られた。このように視覚・触覚・聴覚を通じて得られた感覚や情報を大脳新皮質でまとめることにより、何がどこからどのような速度で現れるのかを総合的に判断することが可能となった。総合的な判断に基づいて次の行動に移ることで、明かりのない夜間でも活動が可能となった。こうした大脳新皮質の進化は、哺乳類の脳の進化で極めて画期的だった。大脳新皮質が発達し、多くの神経細胞が作り出されたことによって哺乳類は情報を分析したり処理する能力を遥かに向上させることができた。

脳は身体の中でも特にエネルギーを消費する部位であるため、暗闇で捕まえることができる昆虫だけでは脳に必要な食糧を確保するので精一杯だった。そのため、ラオレステスのような哺乳類は、食事によって体長が大きく変化することはなかった。その結果、アデロバシレウスの登場から7000年が経過してもなお、体長は10cmから15cmへと変化しただけだった。恐竜のような大型の爬虫類と、ラオレステスのような小型の哺乳類の体長の違いは、寿命の違いにも現れた。スーパーサウルスは100年ほど生きるのに対して、ラオレステスは2年ほどだった。こうした寿命の長さの違いは、進化の速度に影響を与えることになった。すなわち、スーパーサウルスが1世代生きる間にラオレステスは50世代生きることができたため、“次世代への期間の短さ”が種の多様化を促し、進化の速度を速めることになった。

■6600万年前 ‐第五次大量絶滅‐【新生代古第三紀】



直径10kmの小惑星が、時速11万kmの速度で地球に衝突した。衝突の衝撃によってマグニチュード11の地震が発生し、高さ300mの津波が発生した。衝撃の音と光によって、多くの生物の耳が聞こえなくなり、眼も見えなくなった。爆風や津波によって多くの生物が死滅した。
小惑星の衝突によって巻き上げられた高温の粉塵は大気を熱し、地表を灼熱の大地にした。衝撃が巨大な火山の噴火を引き起こし、煮えたぎる溶岩は数百万平方kmに広がった。硫黄を含む大量の猛毒の塵が地球全体に広がり、生物が呼吸できない程に埃が充満して空気呼吸をする全ての生物に害が及んだ。地球は1年近くにわたって粉塵や濃い刺激性のガスに覆われ、太陽の光が遮断されることで昼夜を問わず暗闇が続いた。
衝突によって大気の温度は数百℃になり、地表では大火災が発生して多くのものが燃え尽きた。高温と酸欠によって、恐竜をはじめとした大型動物は絶滅した。大火災が収まると、太陽光を遮っていた粉塵や煙が高温だった地表や大気の温度を低下させていった。地球の気温は5~30℃程度低下し、そうした環境が10年以上続いた。
暗闇の中では植物が光合成を行うことが困難となり、植物は育たず、草食の動物も絶滅していった。小惑星の衝突地点の岩石から発生した硫黄酸化物は上空に舞い上がって酸性雨になり、海中に降り注いだ。海が酸性化されたことで、アンモナイトをはじめとする多くの海中生物が絶滅した。体長が1m以上あった動物のほとんどが死滅し、地球全体ではあらゆる動植物の種の50%~80%が姿を消した。

■6600万年~6500万年前 ‐恐竜の絶滅後‐


小惑星の衝突によって破壊された地球環境は、湿地などの周辺の植物から再生した。コケ植物の再生後、1年後にはシダ植物が再生した。その後、シダ類が繫栄した。シダ類は胞子が軽く、頑丈であったために枯れ果てた大地に広がることができた。胞子は風に乗って移動することが可能であり、行き着いた先で根を下ろすことができる点も繫栄の要因となった。
衝突から50年後には低い木が生えそろい、1万年後には森林が形成された。なお、粉塵や煤煙などで上昇した炭素濃度が正常に戻るには、13万年の時間が必要だった。また、海中を含めた全ての環境が小惑星の衝突前の状態に戻るには、300万年ほどの時間が必要だった。

森林では、それまでの裸子植物に混じって被子植物が急速に勢力を広げていった。被子植物の登場によって昆虫も多様化し、様々な種類が現れた。それにより、“緑”しかなかった森に様々な色を持った花が現れ始めた。
様々な自然環境が元に戻ってもなお、恐竜が復活することはなかった。小惑星が衝突した後の厳しい環境を生き延びたのは、“プルガトリウス”のような身体の小さな哺乳類だった。

(出典:古世界の住人
プルガトリウスは最古の霊長類に位置付けられ、サルの祖先ともいわれている。多くの食糧を必要とする大型の恐竜が絶滅した一方で、必要な食糧が比較的少ない小型の哺乳類は地中に避難するなどして生存し続けた。プルガトリウスは身体を温めるために体毛を生やし、温血動物だった特性ゆえに、巨大隕石衝突後の寒冷化した環境の中でも生きていくことができた。

恐竜の絶滅後、哺乳類が捕食の危険性から解放されると哺乳類は急速に繫栄することになった。1億5000万年にわたって体長に大きな変化がなかった哺乳類は、その後は急速に大型化と遂げていった。ネズミほどの大きさだったものが300万年後にはイヌほどの大きさになり、500万年後には様々な形と大きさの哺乳類へと進化していった。

■6000万年前 ‐最古のサルの登場‐


ネズミほどの大きさの哺乳動物から、最古のサルである“アルティアトラシウス”へと進化した種が登場した。アルティアトラシウスは親指が他の指と向き合う“拇指対向性”を獲得したことにより、物を掴むことができるようになった。
多くの哺乳類が森の中での生活を避けた中で、サルだけは森で生活した。森には主に“林床”と“樹上”があり、多くの哺乳類は草原と林床を行ったり来たりしていたが、サルだけは樹上での生活を選んだ。サルは樹上で生活することで、昆虫食から植物食へと変化した。昆虫食と比べると植物食は量が豊富で高カロリーなため、サルは次第に大型化していった。また、大型化の過程で後肢での歩行を獲得したことから、遠く離れた場所まで食糧を運べるようになった。森林で生活することを選んだサルは樹上で生活することで枝や果実など掴む能力が発達し、脳を大型化させていった。

■5500万年~3500万年前 ‐哺乳類の多様化‐


超大陸パンゲアは“ローラシア大陸”と“ゴンドワナ大陸”とに分裂していった。その後も大陸の分裂は続き、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、オーストラリア、南極大陸に分かれていった。

(出典:古世界の住人
大陸が分かれるにつれて、動物や植物は新しい環境に適応していった。このような生息地の分断が生物の多様性を導き、世代を経るにつれて異なる種へと進化していった。

大型爬虫類である恐竜の絶滅後、哺乳類に様々な種が登場した。
・森:サル、シカ、イノシシ、クマ、コアラ、パンダ
・草原:ウマ、ロバ、ウシ、ブタ、ヒツジ、キリン、カンガルー
・地中:ネズミ、ウサギ、キツネ、アナグマ
・川や沼:サイ、ゾウ、カバ
・砂漠:ラクダ、ラマ
・海:クジラ、イルカ、アザラシ

■3500万年前 ‐最古の狭鼻猿類(人類の祖先)‐


樹上生活に適応した霊長類の中で、人類の祖先となる“狭鼻猿類(左右の鼻の孔の間隔が狭い種)”が登場した。彼らは長い樹上の生活によって、手足で器用に物を掴める進化を遂げた。こうした手足の変化は、手で物を掴んだまま足で移動することを可能とした。

■1000万年前 ‐森林から草原へ。類人猿の登場-【新生代新第三紀】


森林の葉は、動物からの捕食を避けるために自らを有毒化していた。そのため、森林で生活していたサルは草食ではなく昆虫食だった。とはいえ、全てのサルが昆虫を確保できたわけではなく、劣位のサルは果実食へと食性を変化させざるを得なかった。もっとも、鳥類も果実食であったため、鳥類との競争にさらされた劣位のサルは葉を食する必要性に迫られた。そこでサルは、体内に有毒物質を分解するバクテリアを持つことや腸を長くすることにより、葉を食糧とできる体質を獲得した。葉は非常に高タンパクであり、果実よりも栄養価が高かったため、葉食となったサルは次第に大型化していった。

森の中では、肉食の習慣を持つサルも現れた。また、物を掴むことができるようになったことから木や石などの簡単な道具を使いこなすサルも現れた。その後、草原に進出したことで森林に残ったサルよりも早く進化を遂げることになった。草原に進出したサルは、後に類人猿となった。

4.人類の誕生、すなわち起源と進化の歴史


■700万年前 ‐二足歩行の猿人の登場-


樹上性生物である狭鼻猿類の一系統が進化を遂げたことで、地上で暮らす二足歩行する猿人である“サヘラントロプス・チャデンシス”が登場した。

■440万年前 ‐原始的な人類の登場-


直立二足歩行が可能となった初期の人類の一種である“アルディピテクス・ラミダス”が登場した。アルディピテクス・ラミダスには樹上で暮らしていた霊長類の名残があり、足でも物を掴むことができた。身長は120cm、頭蓋容量は300cm^3程度。同時期には、他の種族であるアウストラロピテクスも登場した。脚は長く、まっすぐになり、足先も伸びる進化を遂げた。これに対して、直立歩行をすることなく森に留まった種族にはアウストラロピテクスほどの変化は生じず、脳が拡大するもことなく現在のチンパンジーやボノボへと進化していった。
アウストラロピテクスは、チンパンジーなどの類人猿が行うようなナックルウォーク(両手でこぶしを作って前肢として利用する歩き方)ではなく、両腕を体側で振って歩く方法を身に付けた。この方法により、最小限のエネルギーでスピードを出すことが可能となった。

■230万年~140万年前 ‐ホモ・ハビリスの登場‐【新生代第四紀】


【身長:100~150cm/頭蓋容量:510~660 cm^3】
250万年前~150万年前にかけて、気候の乾燥化によって多雨林が熱帯性の乾燥林や移行帯のサバンナ林地となった。サバンナ林地では樹上と異なり外敵から身を守るために遠くを見渡す必要性があったため、種の保存のためには安定した二足歩行が求められるようになった。また、環境が乾燥化することによって食糧が減少したため、食糧を確保する手段も求めるようになった。そこで人類の祖先である“ホモ・ハビリス”は、地中から食糧を調達するために根や塊茎を掘る道具を作り出した。肉を骨から削ぎ落とすために、鋭利に尖った石器も知的に用いた。

木材や石を加工して道具を作り出すためには、眼と手を正確に連動させる必要があった。そのためには手先を器用に動かせることが必要となり、運動技能の発達が求められた。こうした道具作りにより、脳はますます大きくなっていった。
脳の大きさは全身の2%程度であるのに対して、思考には全エネルギーの20%程度を消費する。そのため、脳が発達するにつれて必要となるエネルギーも多くなっていった。多くのエネルギーを得るためには肉の摂取が効率的であり、肉を得るためには動物を効率的に狩る必要があった。動物を効率的に狩るために道具や武器を作ることで、脳はますます進化を遂げていった。

■180万年~20万年前 ‐ホモ・エレクトゥスの登場‐


【身長:180cm/頭蓋容量:850~1,100 cm^3】
アフリカ大陸の気温の暑さゆえに身体を保温する必要がなかったため、次第に原人の体毛は失われていった。“ホモ・エレクトゥス”は石器をより高度に加工し、槍なども作った。ホモ・エレクトゥスが加工した道具はホモ・ハビリスが加工したものとは異なり、石の両面が削られて先端が鋭利に尖っている特徴を持っていた。こうした両面加工石器の刃渡りは、それ以前のものよりも最大で4倍も長く、木を叩き切ったり根を掘り出したり、または動物をさばいたり皮をはいだりするのに適していた。
ホモ・エレクトゥスは道具を巧みに操っただけでなく、火を使うことも覚えた。火の使用により、原人の生活は大きく変化することになった。火を用いることで、灯りと暖房を手に入れた。火は夜間に肉食動物を寄せ付けない役割を果たし、猿人の安全性は増した。また、火は食生活も変化させた。食糧を焼いて摂取することにより、それまで以上に肉を効率的に摂取することが可能となった。さらに、それまで摂取できなかった食糧を調理して摂取できるようになった。

直立二足歩行によって骨格が変化したことで、発声気管が従来よりも低い位置に下がった。これによって発声が容易になり、言葉の発達が促された。脳内では、言語を司る部位である“ブローカー野”が備わり始めた。この頃になると100人程度の集団で生活するようになり、発声によるコミュニケーションが促進されていった。

■170万年前 ‐ホモ・エレクトゥスの旅立ち‐



石器の使用と肉食の効率化によって脳や体格が大型化したことから、これまでアフリカ地方でのみ生活していた原人は行動範囲を拡大させた。アフリカを出た後、ホモ属の複数の種が別々の地域で独自に進化し、地形や気候の違いからそれぞれの進化を遂げた。

■30万年~3万年前 ‐ホモ・ネアンデルターレンシスの登場‐


【身長:160~180cm/頭蓋容量:1,200~1,500 cm^3】
“ホモ・ネアンデルターレンシス”は体毛がほとんどなく、動物の皮を衣服として用いていた。容姿の面では現生人類とほとんど違いが見られなくなった。頭蓋容積と脳は現代人と同等かやや大きい程度で、ヨーロッパや中東で生活していた。
ホモ・ネアンデルターレンシスは人類で最初の家(隠れ家)を作った種族であり、死者を埋葬する際には花や装飾品を添える文化を有していた。また、信仰心や一種の宗教を持ち、上下関係のある社会を築いていた。文化を持つ人種ではあったが知能はそれほど高くなく、言語も複雑ではなかった。使用する石器は数万年にわたって同じタイプであり、同じ形の石器を狩りや調理などの用途に幅広く使っていた。大半は大陸氷河の縁に広がる寒冷な草地の厳しい気候に適応していったが、それ以上の進化を遂げることなく3万年ほど前に絶滅した。

■20万年前 ‐ホモ・サピエンスの登場‐


【身長:140~190cm/頭蓋容量:1,000~1,480cm^3】
ホモ・ネアンデルターレンシスと異なる進化を遂げた種である“ホモ・サピエンス”が登場した。ホモ・サピエンスはホモ・ネアンデルターレンシスよりも創造力に富んでおり、肉を切り取るための石器や、骨や角を削って槍の先などを作るための石器など、目的に応じて新しい石器を生み出した。
石器以外にも、形が整えられて表面に幾何学模様が刻まれた石片なども作っていた。それ以前に発見された石器は獲物を捕ったり食糧を調達するといった目的のために必要な加工がなされているだけの単純なものであり、道具以上の意味はなかった。これに対して、ホモ・サピエンスへと進化を遂げることで抽象的な思考が可能となった。

抽象的な思考は文化の発展を促進させ、芸術的な活動を促すことになった。貝殻に小さな穴を開けて装飾品として用いることや、アザラシの骨から油を抽出して赤い顔料を作り出すことなども覚えた。

15万年ほど前になると、発音を可能とする身体的な条件が整った。ホモ・サピエンスはホモ・ネアンデルターレンシスと比較して言語を駆使する能力が高かったため、言語によって世代を重ねて知識や技術を進化させることが可能であった。この点、言語能力の乏しいホモ・ネアンデルターレンシスでは、自身の世代で高い技術力を身に付けたとしてもそれを後世に残すことはできなかったため、石器の作成技術などが継承されることなく、数十万年にわたって同じ石器を使用することになった。

■7万5000年前 ‐環境の変化と人口の減少‐


インドネシアのスマトラ島で、島の西側にあるトバ火山が大噴火した。巨大噴火は長さ100km、幅30kmに及んだ。火山噴出物(硫酸エアロゾル)はおよそ10日間で地球を一周し、塵が厚い層となって地球全体を覆った。太陽の光が遮られた地球は、2年で平均気温を12℃下げた。

地球全体の寒冷化によって多くの植物が死滅し、それを食べていた動物が死滅した。これによって人類の食糧も底をつき、多くの人類が死亡した。大気は何年にもわたって黒雲に覆われ、作物は育たず、土地は荒廃し、人類は過酷な環境での生活を強いられた。こうした環境の悪化により、世界の人口は5,000人程度にまで落ち込んだ。

■6万5000年前 ‐アフリカからの移動


アフリカにいた人類が世界各地へと移動し始めた。

■5万年~2万5000年前 ‐文化・芸術の発展‐


動物の骨や牙・角を利用して、装飾品や縫い針、油を燃やすオイルランプなどが作られるようになった。また、ネックレス、ペンダントヘッド、フルートなども作り出した。2万5000年前には、動物の油を用いて絵の具を作成し、洞窟の壁に様々な色で牛の絵を描いた。そうした壁画には、洞窟内の岩の凹凸を活かして立体感を出す工夫が施されていた。また、2万4000年前には土を用いて像なども作り出した。

■4万年~3万年前 ‐新人(ホモ・サピエンス)の台頭‐


ホモ・サピエンスはホモ・ネアンデルターレンシスよりも体格が小さく腕力は半分程度だったが、知能が高かったため次第に繫栄していった。その一方で、ホモ・ネアンデルターレンシスは姿を消した。

■3万年前 ‐南米アメリカ大陸への進出‐


アフリカを出発してヨーロッパやアジアに進出した人類は、北欧やシベリアなどにも進出していった。その後、マンモスなどの大型動物を追ってアメリカ大陸に進出した。当時はユーラシア大陸とアメリカ大陸が陸続きになっていたため、ユーラシア大陸の東の果てまで辿り着いた人類は、そのまま北アメリカ大陸に上陸できた。こうして、今から1万年前には、南アメリカ大陸の南端にまで到達した。

■1万5000年~1万年前 ‐農耕・牧畜生活の開始‐


世界各地へ散っていった人類は、それぞれの地で狩猟・採集生活を行った。1万2000年ほど前になると、人類は自分たちにとって利益になる動物や植物を選んで増やす“人為選択”を覚えた。土地を耕し、植物を栽培し、動物を繁殖させることで農耕と牧畜生活が始まった。これにより、安定的に食糧を確保できるだけでなく、定住生活が可能となった。

農耕・牧畜生活によって定住生活を確立した人類は、複雑な社会を築いていった。狩猟・採集生活では数十人程度の集団に留まっていたが、農耕生活を始めてからは食糧の収穫量が増え、養える人数も多くなったために数百人規模の集団を形成することができた。こうした大規模な集団が形成される以前は、オスの役割は狩り、メスの役割は子育てと、性別の違いによって互いの役割の違いが定まっていたが、食糧の生産・備蓄を可能としたことから同じ性別でも個々の役割に変化が生じることになった。

■7500年前~ ‐文明と文化の発達‐


食糧の生産や備蓄が可能となったことから、食糧の生産に関わらない仕事が登場した。いわゆる“職人”の登場である。焼き物や宝飾品、布を作成する技術者や、豊作を願い、災いが起きないように祈る神官や呪術師も登場した。食糧に余裕が生じ、移動せずに生きていけることから人口が増加し、取引、商人も登場した。

大人数で構成される社会では、規則や統治者が必要となった。紀元前5500年頃には、メソポタミア地方にて人口が1万人を超える都市が登場した。この頃になると収穫した食糧だけでは全員が安定した食生活を送ることができなくなったため、食糧を貯蓄する必要性が生じた。そこで、貯蓄した食糧から必要なものを受け取ったり、交換するために経済活動が始まった。

発展した都市の中では統治のために王や皇帝が誕生し、軍隊も登場した。紀元前5000年頃には商取引の関係から記号が誕生し、その後に文字へと進化した。

紀元前4100年頃には文字や法律、そして物の売買を行う商業体制が登場・発達し、文明社会が始まった。

都市が発展するにつれて都市間で富の差が生じはじめ、富の差が争いの原因となった。それぞれの都市は、争いに備えるために都市を城壁で囲むようになった。こうして、人類同士で争い合う歴史が幕を開けた。

関連書籍

◇参考文献
●『137億年の物語―宇宙が始まってから今日までの全歴史』(クリストファー・ロイド)
●『地球・生命-138億年の進化』(谷合 稔)
●『生命はなぜ誕生したのか』(ピーター・ウォード、ジョゼフ・カーシュヴィンク)
●『生命の起源』(ポール・デイヴィス)
●『生命の跳躍』(ニック・レーン)
●『進化の運命』(サイモン・コンウェイ=モリス)
●『地球と生命 46億年をさかのぼる度』(ニュートンプレス)
●『生命誕生と進化の38億年』(ニュートンプレス)
●『人類はどこから来て,どこへ行くのか』(エドワード・O. ウィルソン)
●『人類進化700万年の物語 』(チップ・ウォルター)
●『人類が知っていることすべての短い歴史』(上)(ビル ブライソン)
●『人類が知っていることすべての短い歴史』(下)(ビル ブライソン)

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