脳と心の病

よくわかる精神疾患

 一般的な身体医学であれば、症状は目に見える具体的な状態で現れます。これに対して精神医学では、その症状が具体的には見えづらいという特徴があります。
 ここでは、脳や心の病である『精神疾患』について、その歴史や主な原因、個々の症状を詳しくみていきます。

1.精神疾患総論


 脳や心の病気は、一般的に『神経疾患』と『精神疾患』に大別されます。『神経疾患』は“脳という器官や神経細胞の異常が明らかになっている病気”と定義され、『精神疾患』は“脳や神経に異常が明らかになっていない心の病気”と定義されます。
 厳密にいえば脳や心の病気はすべて脳や神経細胞に原因があるため、この分類は便宜上のものであるといえます。いずれも『脳の病気(=心の病気)』であることから、以下では『神経疾患』と『精神疾患』を併せて『精神疾患』として扱います。

■1-1.精神病の歴史


 脳や心の病は、古来より悪霊や悪魔、または動物などが憑いたことで生じる症状であると考えられていました。そのため、暴力的な悪魔祓い(ばらい)や病者を清めるための痛みをともなう治療がおこなわれていました。

 15世紀初頭、精神病患者の収容施設として世界で初めて癲狂院(てんきょういん)がスペインのヴァレンシアに開設されると、他国も同様に開設しました。しかしこれらの施設では、精神病患者は服従させるべき動物のように扱われていました。15世紀頃のヨーロッパでは魔女狩りが盛んに行われるようになり、その中で多くの精神病患者が処刑されました。
 16世紀になると、医学は急速に進歩しました。しかし、脳や心の健康の研究は身体医学と比較すると後れをとっていました。

 18世紀の終わりが近づいた1789年、フランス革命が勃発。自由・平等・友愛の理想が掲げられた市民革命は、精神病患者に対する考え方に影響を与えました。精神病院で動きを束縛するための鎖や拘束服、または病を振り払うための回転椅子に縛られていた精神病患者は解放され、ようやく人道的な処遇が与えられるようになりました。

 20世紀になると、『患者の話に耳を傾けるだけで精神病者を直す』という考え方がジークムント・フロイトから提唱されました。こうして、精神病の理解は進むようになりました。とはいえ、まだそのすべてが解明されていないというのが現状です。

 かつて、医学の世界では幻覚症状がみられる状態などを漠然が『精神病』として扱われてきましたが、現在では幻覚症状の原因が精神的な疾患にあることから他の精神的な疾患と併せて『精神疾患』として扱われています。すなわち、『精神病』は今や古い概念であり、現代精神医学ではかつて精神病と呼ばれた症状も含めて、脳や心の病気を総じて『精神疾患(精神障害)』とされています。

■1-2.精神疾患の主な原因


 精神疾患の原因は、主に3つに分類することができます。それぞれ、心理的な素因が原因となる『心因』、体質的な素因が原因となる『内因』、身体的な病気が原因となる『外因(身体因)』です。『外因(身体因)』は、脳器質性、病状性、中毒性に分類することができます。

・心因性の精神疾患

 心因性の精神疾患は、ストレスや不安、葛藤などの心理的な要因から発症する精神疾患です。ストレスや不安などの大きさだけでなく、その人の性格も発症に関係しています。
 心因性の精神疾患の代表的な症状は、『不安障害』です。さまざまな刺激に対して、強い不安や恐怖をいだきます。

 ストレスには、不安や恐怖、嫉妬や劣等感、怒りなどの心理的ストレス以外にも、転勤や引越、離婚などの社会的ストレス、温度や音などの物理的ストレス、細菌やウイルスなどの生物的ストレス、たばこやアルコールなどの化学的ストレスなどがあります。

・内因性の精神疾患

 内因性の精神疾患は、その人が生まれながらに持っている遺伝的な要素や体質から発症する精神疾患です。なお、いわゆる遺伝病とは異なり、必ずしも親から子へと受け継がれるものではなく、“発症しやすい体質”が受け継がれると考えられています。
 内因性の精神疾患の代表的な症状は、『統合失調症』です。意欲の低下や自閉、倦怠感、さらには幻覚や妄想、思考障害などの症状がみられます。

・外因性の精神疾患

 外因性の精神疾患は、脳の病気や外傷など、外部からの原因によって発症する精神疾患です。代表的なのは、脳が器質的に変化することで生じる『器質性精神疾患』です。事件や事故によって脳が損傷した場合に、記憶の喪失や幻覚の体験、性格の変化などがみられるようになります。こうした症状は、事件・事故以外にも脳腫瘍や脳血管性障害、アルツハイマー病などによっても生じます。
 器質性精神疾患以外にも、脳以外の身体の疾患が原因となって脳機能に影響を与えることで生じる『症状性精神疾患』や、アルコール・薬物などが原因となる『中毒性精神疾患』があります。

2.精神疾患各論


 以下では、下記の精神疾患について詳しくみていきます。
001.統合失調症
002.うつ病
003.認知症
004.パニック障害
005.パーキンソン病
006.自閉症スペクトラム障害
007.ADHD(注意欠陥多動性障害)
008.適応障害
009.てんかん
010.髄膜炎
011.アルコール依存症
012.PTSD(心的外傷後ストレス障害)
013.睡眠障害
014.引きこもり
015.摂食障害
016.広汎性発達障害
017.性同一性障害
018.脳腫瘍
019.感染症
020.脳卒中(脳血管障害)
021.学習障害(LD)
022.児童虐待
023.パーソナリティ障害
024.依存症
025.社会不安障害
026.心身症
027.強迫症
028.解離性障害
029.家庭内暴力
030.意識障害・記憶の異常
031.不安症
032.慢性疲労
033.薬物依存症
034.感情障害
035.虚偽性障害
036.身体症状症
037.痙攣性疾患

■001.統合失調症


(近日公開予定)

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