愛や恋は、ときに媚薬でありときに劇薬です。愛や恋は人を幸せにすることも不幸にすることもあります。古来より、ずっと人の側にあった精神活動が、まさに愛や恋なのです。しかし、「愛」と一口に言っても、その種類はさまざまです。日本語では「愛情」や「友情」、英語では「LOVE」「LIKE」で比較されることもしばしばあります。ここでは、多くの人が興味を持つ愛について、方程式という観点から詳しくみていきます。
心理学者のロバート・スタンバーグによれば、完全な愛とは「コミットメント(宣言)」「親密さ」「情熱」の3つが合わさったものといわれています。
3つの要素からなる、8つの愛
完全な愛とは「コミットメント(宣言)」「親密さ」「情熱」の3つが合わさったものですが、これだけだど少し難しく感じるかもしれません。ひとつずつ分かりやすくみていきましょう。
「コミットメント」とは、“相手が好きだという気持ちの宣言”です。まさに、「君が好きだと叫びたい」を体現したものといえるでしょう。「親密さ」は、“相手と心でつながっている感覚”です。いわゆる相思相愛がこれに当てはまります。そして「情熱」は、“相手の身体に対する執着や欲望”です。「あの人を手に入れたい!」「あの人と付き合いたい!」という想いがそれに当てはまります。
この3つの要素が、「どれか1つだけある」「どれか2つだけある」「3つともある/ない」という状態によって、何かしらの愛のカタチが生じます。そう、愛のカタチには色々な種類があるのです。
どれか1つだけある状態
「コミットメント」だけがある状態⇒【空虚】
⇒相手が好きだという気持ちを宣言するのみで、実際には親密さや情熱がない状態です。友情も愛情もないので、愛と呼べる状態ではないともいえます。
「親密さ」だけがある状態⇒【好意】
⇒好きと宣言しているわけでもなく、相手の身体に対して執着しているわけでもない状態です。愛情というよりも友情に近く、異性というよりも同性の友人に対する気持ちに近いといえます。
「情熱」だけがある状態⇒【夢中】
⇒友人関係にあるわけでなく、それでいて好きと宣言もしていない状態です。相手の身体に興味を持ち、強い執着心を抱いているときがこれに当てはまります。アイドルや芸能人に憧れる心理もこれに近いでしょう。
どれか2つだけある状態
「コミットメント」と「親密さ」がある状態⇒【友愛】
⇒好きと宣言し、なおかつ好意を抱いている状態です。相手の身体に対する執着がないことから、愛情よりも友情に近いといえます。
「コミットメント」と「情熱」がある状態⇒【愚愛】
⇒好きと宣言し、相手の身体に執着している状態です。しかし親密さがないために、一方的に好意を寄せている状態となっています。アイドルに熱を上げてスマートフォンの待ち受けにしている場合や、身近な人にストーカー行為を繰り返す場合などもこれに該当するといえるでしょう。
「親密さ」と「情熱」がある状態⇒【熱愛】
⇒好きと宣言していなくてもお互いに好意があり、それでいて相手の身体にも執着している状態です。付き合う直前のカップルなどが該当します。
3つともある、もしくはない状態
「コミットメント」「親密さ」「情熱」がある状態⇒【完全愛】
⇒好きと宣言し、互いに心身ともに好意や執着心を抱いている状態です。バランスのとれた完全な愛と考えられています。
いずれもない状態⇒【無愛】
⇒宣言も友情も愛情もない状態で、全くの無関心の場合や敵意を抱いてる場合などが該当します。
どうすれば好きになってもらえる?
多くの人にとって、どうすれば相手に自分を好きになってもらえるかというのは強い関心事といえるでしょう。その答えのひとつとして、心理学者のロバート・ザイアンスが提唱した「単純接触効果」が挙げられます。ロバート・ザイアンスは、人や物に触れる機会が多ければ多いほど、それらに対する好きな気持ちが高まるという「単純接触効果」を提唱しました。この理論によると、互いに興味がない場合でも、頻繁に会うことを繰り返していると次第に好きな気持ちが芽生えてくるといいます。営業マンが何度も顔を見せにやってくるのは、この効果を期待してのことかもしれません。
また、恋愛心理学という分野で業績を残したエレイン・ハットフィールドは、人は自分の社会的地位や知的レベルに近い相手と恋愛関係を結ぶ傾向があるとしています。これは、住む世界が違う相手よりも、身近にいる人のほうが関係を築きやすいためです。こう考えると、好きになってもらいたい異性がいるのであれば、同じ地位やレベルになるよう努力することが大切といえるでしょう。
心理学者ナップの「恋愛関係の段階的変化」
誰にとっても恋愛は非常に興味深いものです。そして、熱や想いのない関係から、具体的にどのように段階を経て熱愛へと変わっていくのかに興味があるかもしれません。かつて、心理学者のマーク・ナップは、恋愛の始まりから終わりまでをそれぞれ5段階の階段にたとえました。以下では、その階段についてみていきます。気になる相手がいるのであれば、自分が今どの段階にあるかを考えてみるといいかもしれません。
マーク・ナップが提唱する「恋愛関係の段階的変化」
恋愛中の各段階には、次のような特徴があります。
上昇の5段階
・一段階目:「開始」
第一印象が大きく影響する段階です。互いに相手に興味を示し、容姿や服装、声や話し方などから相手を知ろうとします。
・二段階目:「実験」
相手の理解を深め、自分と同じ興味や関心を持っていないかを探る段階です。その探りによってこの段階に留まるのか、もしくは次の段階に進むかを判断します。
・三段階目:「強化」
お互いにこれまで以上の個人的な話をして、お互いのことを理解し合おうとする段階です。警戒心がなくなり、互いに相手からのアプローチを期待するようになります。
・四段階目:「統合」
いっそう関係が深くなり、心身ともに距離が縮まる段階です。この段階では愛の告白などもおこなわれるようになります。
・五段階目:「結束」
互いの生活が一緒になる段階です。自分たちの関係をこれまで以上に周囲に広めるべく、結婚式や披露宴などをおこないます。
下降の5段階
恋愛関係の段階的変化は、階段を昇ることだけではありません。結婚したカップルが別れることがあるように、二人の想いの階段は下降することもあります。
・一段階目:「相違」
互いの距離が縮まり過ぎたことで、ふたりの関係にヒビが入るようになる段階です。以前までの結束の強さや絆を感じにくくなります。
・二段階目:「制限」
溜まり続けた不満がふたりの距離を広げ、これまでと同じようなコミュニケーションがとれなくなってくる段階です。大切な話を互いにしなくなります。
・三段階目:「停滞」
関係の悪化が進み、改善が難しくなる段階です。離婚を考えることも多くなります。
・四段階目:「回避」
互いのコミュニケーションがなくなり、同じ家に住んでいても別々に行動するようになる段階です。ただし、破局や離婚というつらい現実を避けるためにヨリを戻したいと考えるカップルもいます。
・五段階目:「終結」
関係が終わりになる段階です。夫婦であれば離婚となり、それぞれ別々の人生を歩むことになります。
どうすれば関係を良くできる?
愛を育むため、もしくは愛が冷めないためにはいくつかのポイントがあります。たとえば、相手に対して細かすぎるところを気にしない、つまりは許すということや、ふたりで過ごす時間をつくる、または互いの共通の知人を持つなどです。まずは形だけでも相手を想っていることを伝え、自分にとっていかに大切な存在であるかを言葉にすることが大切です。
ケンカの後に効果的なのは、「相手の話を積極的によく聞くこと」といわれています。離婚や破局の原因の65%がコミュニケーション不足にあるということを考えると、相手の話を聞くことがいかに大切であるかが分かります。