リーダーは、組織内で強い影響力を持つことになります。組織全体の生産性や成功は、リーダーによって左右されます。そのため、優れたリーダーがどのようなものであるかを知っておくことが大切です。経営学者のロバート・ハウスは、リーダーと部下との関わり方を4つの型に分類した「パス・ゴール理論」を提唱しました。
4つのリーダーシップ
参加型
参加型のリーダーは、部下と話し合い、意見や提案を考慮して意思決定を行います。参加型リーダーシップで大切なのは、経験豊富なメンバーの助言を求めることです。
支援型
支援型のリーダーは、部下が必要とすることに配慮し、気遣いを示して士気の上がる職場をつくりだします。支援型のリーダーシップは、主に危険で単調、退屈な仕事やストレスが多い業務に適しています。
指示型
指示型のリーダーは、部下にすべきことを伝えるとともに守るべき期限やスケジュールなどを適切に伝えます。指示型リーダーシップは、体系的に整理されていない業務なので経験の浅いメンバーの指導に適しています。
達成志向型
達成志向型のリーダーは、困難な目標を掲げ、高い水準の働きを自ら示すとともに、メンバーにも求めます。また、部下への信頼も示します。達成志向型リーダーシップは、能力が高く複雑な業務に取り組むメンバーを導くのに適しています。
優れたリーダーってどんなの?
優れたリーダーの特徴としては、主に5つが挙げられます。
部下の成長を促す
人は成長を後押しされたときに最も意欲が高まります。そのため、メンバーの成長を促すことに注力するリーダーは、動機づけが高く、業務に誠実に尽くす部下を持つようになります。
新しい考えを取り入れる
組織が発展していくためには、新しいアイデアや手法を取り入れることが大切です。新しい考えを積極的に取り入れて問題解決を図ることが、リーダーに求められています。
所属意識を育む
従業員は職場で長期間を過ごすため、精神的な充実感を高めて生産性を改善するためには所属する組織や同僚との結びつきを感じることが重要となります。そのため、メンバーの所属意識を育むリーダーが優れたリーダーといえます。
権限を委譲する
一人ですべてをこなせるリーダーはいません。メンバーの力やアイデアを借りることが大切で、メンバーに仕事を任せて権限を割り当てることができることが優れたリーダーの条件となります。
厳しい倫理観を持つ
高い倫理観を持つリーダーは、誠実さの模範となり組織全体に同様の公正さを求めます。厳しい倫理観が生み出す信頼と安心感に満ちた環境の中でこそ、従業員は最善の仕事をすることができます。
産業心理学・組織心理学ってどんな心理学?
産業心理学や組織心理学は、職場における従業員の心理を扱う分野の心理学です。産業心理学の歴史は古く、組織効率を最大化させるための労働者管理の研究が主軸となります。これに対して組織心理学では、労働者の人間関係や感情的要素の重要性を強調する人間関係運動から発達したという歴史があります。
より良い組織をつくるためのポイント
組織を活性化させ、成長させていくためにはメンバーがビジョンを理解し、協調して働くことが大切です。また、管理者は優秀なメンバーを集め、育てていくことが求められます。より良い組織をつくりあげていくためには、以下のポイントが重要です。
面接
面接では時間をかけて候補者にさまざまな話を聞くことができるため、採用時に不可欠なプロセスとなっています。
採用
組織の成功は、組織で働くメンバーの成功に起因します。そのため、職務や業務に適した候補者を採用することが、組織の成功の第一歩となります。
動機づけ
メンバーが目標を達成するためには、高い動機付けが必要です。この動機付けには、内発的なものと外的報酬によるものとの両方があります。これらふたつの動機付けが、メンバーの熱意を高めるための大きなポイントとなります。
評価
定期的にフィードバック(助言や評価)を行うことで、メンバーは自身の弱みや強みを理解し、改善や進化を実現していくことが可能になります。苦手な分野を克服し、得意な分野を伸ばせるかどうかは、的確な評価にかかっています。
リーダーシップ
組織の文化や目標が定まると、その目標を達成できるようにメンバーの意欲を高める必要があります。この役割を求められるのが、リーダーです。リーダーは自身が高いパフォーマンスを発揮するだけでなく、各メンバーも高いパフォーマンスを発揮できるよう影響を与えていく必要があります。
目標設定
高い壁でありながらも達成可能な目標を設定することが、前向きな動機付けに強い影響を与えます。そして、前向きな動機付けが組織の効率性や業績に影響を与えることになります。
チーム形成
メンバー同士が協力して働くように促すことで、チーム全体の連携を強め、企業の業績を向上させることになります。
変革
企業が目標を達成するためには、組織の構造や方針を変えなければならないことも多くあります。経営者や管理者は、こうした変革が円滑に進むよう支援を行うことが求められています。
産業心理学と組織心理学の違いをもっと詳しく知りたい
産業心理学では、従業員の潜在能力を引き出すことを目的として、職務設計やタレント選抜(職務に合った人材の選抜)、従業員の研修、業績評価などに焦点が当てられます。これに対して組織心理学では、従業員にとって仕事をより充実したものになることに焦点が当てられています。従業員の態度や行動を理解して管理することやストレスの低減、有効な管理手法の考案などに取り組みます。
組織文化と変革の心理学
組織を良い方法へと変革するためには、組織文化が大きな役割を果たします。組織文化は従業員が職場やメンバーをどのように理解しているかを表すもので、組織に特有の対人的・心理的環境を形づくります。変革は従業員と組織文化の結びつきがあるため容易ではありませんが、一定の手順を追って進めることで実現できます。
変革を実現するための手順
組織の変革を成功させるためには、説得力のある理由を示しながら段階的に進めることが大切です。不安を抱く従業員が変化の必要性を理解できるように働きかけることにより、実行中に起こる抵抗が減り、新たな制度や業務の進め方が早く受け入れられるようになります。主に、以下の手順で進めていくことが望ましいといえます。
1.現状評価
組織の変革のためには、組織の現状を評価することが第一歩となります。現状評価により、現状の制度や業務プロセスのうち、どの部分が効率的に機能していないかを判断することができます。この判断を経て、改善の対象となる領域を確定します。
2.事前調査
事前調査を行うことで、全体として変革が及ぶ範囲やどのような変化が必要とされるかを確認します。変革の成否は、日々の働き方に変化を迫られる従業員の協力にかかっています。
3.計画
計画の段階では、組織の新しい戦略や目標の達成に必要とされる体制を考想します。計画には主要な業務の特定や、新たな部門の創設、部門間の関係構築などが含まれます。
4.実行
段階的に移行することにより、変化に抵抗しがちな従業員にとっても変革が受け入れやすいものとなります。新しい運営方法が最終的に従業員に受け入れられるよう、組織はしっかりと情報共有し、従業員たちが変革の一員であると感じられるようにすることが重要です。
5.調整
リーダーは変革に対する従業員の反応に目を向け、問題が起これば対応し、達成の進捗を確認しながら計画を進めていくことが大切です。
どうすれば変革が上手くいくの?
組織文化の変革は、さまざまな手段を駆使することで効果的に推し進めていくことが可能です。主な取り組みとしては、以下のものがあります。
強力なリーダーシップ
リーダーが変革を推進する姿勢を強く見せることで、部下の意欲を高めることができます。
従業員の関与
意思決定のプロセスに従業員を巻き込み、従業員自らも変革に責任を持っているという意識を高めることで変革を進めることができます。
コミュニケーション
実施される変革の特質や実施方法、スケジュールを整理された計画的な方法で伝えることで、変革の実現がいっそう期待できます。
成功のお祝い
変革のプロセスを通して、成功するごとにお祝いをして前向きな雰囲気をつくることで変革の成功率を高めることができます。