脳科学用語集

    
    
    
    
    
    
    
      
    
   を   ん

 

【あ】

|IQ【あいきゅう】

知能指数。知能検査の結果を表す数値で、一般にIQ(intelligence quotient)といわれる。

|愛他主義【あいたしゅぎ】

利他主義とも訳される。Freud Aは、愛他主義を「攻撃者との同一化」とともに、防衛機制が組み合わされて生じるものとして論じた。たとえば、異性を惹きつけたい願望が、超自我との葛藤を生じた際に、その願望を意識せずに他の人に投影し、その人が称賛されるのをみて自分が喜びや満足を得るなど、社会的に許容されやすい形で自分が間接的な満足をえるもの。

|青い鳥症候群【あおいとりしょうこうぐん】

1970年代以降の日本に一部みられた、高学歴青年の社会病理。有名企業や中央省庁に就職したにもかかわらず、自分の才能を発揮する場ではないといった理由で安直な転職を繰り返す症状。疾病ではなく、自己同一性拡散状態と考えられている。

|アカデミックハラスメント【あかでみっくはらすめんと】

大学キャンパス内で生じる、パワーハラスメントのひとつ。大学の構成員が他の構成員に対して自身の地位や権力を乱用して教育指導や研究活動、労働に関する妨害や嫌がらせ、不利益を与えること。日本の医学部で初めて用いられた。

|アロマテラピー【あろまてらぴー】

植物の花や葉、茎などから抽出された精油(エッセンシャルオイル)によってリラクセーション効果や覚醒効果を得たり、心身の疾患を改善させる療法。

 

【い】

|ES細胞【いーえすさいぼう】

人体では約60兆個あるといわれるている細胞は、もとを辿ればすべて受精卵というひとつの細胞に行きつく。生死を繰り返す身体の組織の多様な細胞も、もとは幹細胞という親細胞から作り出されている。幹細胞には、胚から作られる胚幹細胞(ES細胞)と各組織に存在する成体幹細胞がある。ES細胞は身体を形づくるあらゆる細胞になりうる性質(多能性)と、ほぼ無限の自己複製能力を有する。

|息止め発作【いきどめほっさ】

生後6ヶ月頃から3~4歳までにみられる生理現象。過度に驚いたときや泣いた後に呼吸が停止し、低酸素状態になることで痙攣や意識障害が生じる。成長するにつれて自然に消滅していく。

|意識消失発作【いしきしょうしつほっさ】

一過性に突然意識を失うこと。不整脈、迷走神経反射、貧血、低血糖、脳血管障害、頭部外傷、てんかん発作などさまざまな原因で脳血流低下あるいは低酸素状態となることで引き起こされる。原因によって予後や対処法が異なるので、鑑別診断が重要となる。

|依存性パーソナリティ障害【いぞんせいぱーそなりてぃしょうがい】

世話をされたいという広範で過剰な欲求のために従属的でしがみつく行動をとり、分離に対する恐怖を持つパーソナリティ障害。

 

【う】

|ウェルニッケ失語【うぇるにっけしつご】

感覚性失語、受容性失語、中枢性失語、後方型失語などの名称でも呼ばれる。基本的障害は語音認知、語彙理解、語彙の検索・選択で、これらの障害が複合して多彩な症状が出現する。

|ウェルニッケ脳症【うぇるにっけのうしょう】

Wernicke C[1881]は、アルコール中毒や嘔吐に続いて出現した第3脳室、第4脳室の周囲の灰白質に限られた出血性脳炎を急性出血性上灰白質脳炎として報告した。ビタミンB1(サイアミン)欠乏によるもので、アルコール中毒、胃がん、胃切除、持続する激しい嘔吐などが原因となる。

|運動幻覚【うんどうげんかく】

身体の一部や全体の運動感覚に関する幻覚。手や足、後頭部などが動いていると感じる。入眠時や統合失調症、感覚遮断、せん妄状態などで生じる。

|運動爆発【うんどうばくはつ】

急激に生じる衝動的、無統制、過剰な運動。無計画な攻撃運動と逃避運動からなる。

 

【え】

|鋭・徐波複合【えい・じょはふくごう】

突発性脳波異常のひとつ。鋭波の後に徐波が続く複合波を意味する。局在性にも全般性にも出現し、群発を形成することもある。非定型欠伸発作や非けいれん性てんかん発作重積では2.5Hz以下の全般性鋭・徐波複合が偽律動性に群発することがある。

|エクスタシー【えくすたしー】

一般語としては、有頂天、宗教的な忘我、喜悦。精神医学的には、特有の意識状態を指す。不安と恍惚の両極を動揺するLeon-hard Kの不安-恍惚精神病では、恍惚や至福感を特徴とする病相の極においてエクスタシーを呈する。

|エコノモ脳炎【えこのものうえん】

1917年、Economo C von(1876~1931)が記載した脳炎で、嗜眠性脳炎(encephalitis letharcgica)または流行性脳炎(encephalitis epidemica)ともいう。1915年から1918年にかけてヨーロッパで大流行がみられた。発熱後に傾眠と昏迷が出現し、パーキンソン症候群などの後遺症が多くみられた。

|fMRI【えふえむあーるあい】

脳や神経の活動を核磁気共鳴信号を通してみる視覚化する方法。「functional magnetic resonance imaging」の略。

 

【お】

|応声虫【おうせいちゅう】

腹の中から声が聞こえ、それと応答することになるという現象で、江戸時代の奇談集や医書で呼ばれていた。現在では、統合失調症の場合の幻聴の型や憑依体験に相当する症状であると考えられている。

|オセロ症候群【おせろしょうこうぐん】

配偶者や性的パートナーが不実をはたらいていると妄想的に確信する症状。嫉妬妄想や病的嫉妬が主な徴候をなす。病名はシェイクスピアの戯曲「オセロ」の主人公の名に由来する。

 

【か】

|絵画療法【かいがりょうほう】

芸術療法の中で、絵画を用いて精神的な治療を行うものを指す。

|概日リズム【がいじつりずむ】

約24時間周期をもった生体現象(睡眠と覚醒、深部体温、メラトニンやコルチゾールなどのホルモン分泌)の変動。これらの生体リズムは互いに関連し合っており、視床下部の視交叉上核にある体内時計機構によって調整されている。サーカディアンリズムとも呼ばれる。

|カプグラ症候群【かぷぐらしょうこうぐん】

身近な人物を外見が瓜二つの別人とみなす人物誤認。外観の同一にかかわらず対象の同一性や真正さが否定されることから「ネガティブな替え玉錯覚」とも呼ばれる。内因性・心因性・器質性のいずれの疾患にもまれながら出現する。

 

【き】

|機会犯罪者【きかいはんざいしゃ】

機会的、一時的な外部条件の影響で偶発的に犯罪に陥った者。「慣習犯罪者」の対義語。

|既視感【きしかん】

初めて見る物や場所について、過去に既に見たように感じる現象。狭義には視覚モードの減少のみをさすが、広義には聴覚モードや多種モードの現象をも含む。

|キャンパス精神医学【きゃんぱすせいしんいがく】

大学精神医学とも呼ばれる精神医療の一分野。この分野が注目を浴び始めたのは1970年代前後、高度成長の波に乗る形でスチューデントアパシー(いわゆる五月病)が登場した頃である。大人になるのを先延ばそうというモラトリアム心性が背景にあると理解された。現在、大学生の多くは受験勉強に追い立てられ、さまざまな年齢で経験すべき人間関係が極めて限定され、乏しいため、自己中心的で、人間関係が苦手であり、自ら援助を求めてくることが少ない。彼らは今までに克服しておくべき発達課題を未解決なまま大学時代に持ち越しているため、その解決への支援が重要となる。

|ギャンブル依存【ぎゃんぶるいぞん】

ギャンブルによって経済的、社会的、精神的に自分の不利益になっているにもかかわらず、ギャンブルという行為に執着し、自分の意思でコントロールすることが困難な状態。

 

【く】

|クヴァード症候群【くう゛ぁーどしょうこうぐん】

妻の妊娠中に夫が腹痛や吐き気などのつわり様の症状を示すこと徴候の総称。擬娩症候群ともいう。一種の心身症とみなされている。

|クライアント中心療法【くらいあんとちゅうしんりょうほう】

来談者中心療法ともいう。古くは非指示的精神療法といい、近年ではパーソン・センタード・カウンセリング(PCC)、パーソン・センタード・セラピー(PCT)ともいう。

 

【け】

|計算癖【けいさんぐせ/けいさんへき】

計算強迫と同義。自らの意志に反し、目に入るものの数を数えないと不安になる症状。本棚の本の冊数や階段の段数、道路の走行車数、歩行者数、男女比など。典型的には強迫性障害に出現する。

|ゲシュタルト崩壊【げしゅたるとほうかい】

知覚における全体性をもったまとまりのある構造としてのゲシュタルトが失われ、個々の構成要素に分解されて知覚される現象。日本人によく経験される例として、漢字が偏(へん)・旁(つくり)その他の要素の寄せ集めにみえ、一つの文字として捉えられなくなる現象が挙げられる。

 

【こ】

|語唖【ごあ】

字義の通り「発語できない」という意味。

|行為心迫【こういしんぱく】

目標の十分に定まらない欲動の亢進を心迫と呼び、これに促された行為を心迫行動という。意味もなく絶えず動き回るのは運動心迫、ややまとまりのあるのが行為心迫、忙しく活動するが全体の統一性に欠けるのが作業心迫である。

|コカイン【こかいん】

南米に自生するコカの葉に含まれている化学物質(アルカロイド)。中枢神経興奮作用を有し、強烈な精神依存惹起作用を有するが、身体依存性と耐性はないとされている。コカインの精神依存性の強さは各種の依存性薬物の中で最も強いとされている。使用直後より多幸感、万能感を体験しやすいが、1時間後には不安感や抑うつ感、焦燥感を感じやすい。1970年代初頭、アメリカで乱用が拡大し、その後に世界規模で乱用が拡大した。

|言葉のサラダ【ことばのさらだ】

単語と単語の間の関係が不明なため、あたかもサラダの中のいろいろな野菜や果物のようにさまざまな単語がでたらめに並べられているようにみえる解体した発話を指す。統合失調症における思考障害(思考滅裂)の高度な現れとみなされる。

 

【さ】

|罪悪感【ざいあくかん】

自分が法律や道徳、宗教などの規範にそむく行為をなしたと思う気持ち。

|サイトカイン【さいとかいん】

一般に、細胞の増殖、分化、死などは周囲の細胞によって厳密に制御されている。こうした細胞同士のコミュニケーションは、細胞表面分子を介する直接的な細胞同士の接触や可溶性分子を介して行われている。この細胞間情報伝達分子がサイトカインである。サイトカインは種々の細胞から分泌され、細胞の情報伝達にかかわるタンパク質である。

 

【し】

|GHQ【じーえいちきゅう】

General Health Questionnaire(一般健康調査質問紙)の略。イギリスのモーズレー精神医学研究所のGoldberg DPによって開発された、精神的健康度を診断するための心理検査(質問紙法)。世界各国で幅広く活用されている。

|色聴【しきちょう】

ある音を聞くと特定の色が見える現象。子どもによくあるとされる。色聴をはじめ共感覚全般に病的意義は不明で、創造性や記憶能力の高さなどと関連が言及されることがある。

 

【す】

|睡眠【すいみん】

中枢神経系の睡眠中枢により積極的に引き起こされる、一定時間続く移動や外界の注視など活動の減少ないし停止で、刺激に対する反応性低下を伴う状態。

|睡眠物質【すいみんぶっしつ】

睡眠と覚醒は、神経機構と液性機構の二つの機構によって調整されている。睡眠物質は、液性機構を担っている。睡眠欲求の高い状態では脳内あるいは体液内に出現して睡眠を引き起こし、維持させる物質の総称。

 

【せ】

|性格【せいかく】

その人個人に一貫してみられる感情や意欲、行動の諸側面における特徴的パターンを指す用語。語源はギリシャ語の「χαρακτήρ(カラクテール)」で、「刻みつけられたもの、彫りつけられたもの」という意味の言葉に由来する。

|成功した時に破滅する人物【せいこうしたときにはめつするじんぶつ】

Fred S [1916]が描出した性格類型の一つ。長い間抱いていた願望が成就することで、むしろ破滅し、それを享受することができなくなる人物を指す。

|正視恐怖【せいしきょうふ】

対人恐怖症状の一つ。人と視線を合わせることに強い恐怖を覚える症状で、視線恐怖とも呼ばれる。

|窃視症【せっししょう】

性倒錯あるいはパラフィリア(性嗜好異常)の一形態。他人の生活や性行動を気づかれることなく覗くことによって性的興奮を得る症状。犯罪に繋がりやすい傾向を持つ。

 

【そ】

|想像妊娠【そうぞうにんしん】

妊娠していない女性に、腹囲増大、無月経、乳房の腫大と乳汁分泌、陣痛、悪心、胎動の自覚などの典型的妊娠所見が現れるものをいう。国際疾病分類では、身体表現性障害に含まれる。内分泌の変化を伴うこともあるが、それが原因ではない。心理的発症要因として、妊娠に対する願望または恐怖などが想定されている。

|相貌失認【そうぼうしつにん】

視覚失認に一型で、粗大な視覚障害が見当たらない家族や知人、有名人の顔を視覚的に認識できない状態。その人の声を聴いたり、髪型や服装などの顔以外の特徴の手がかりがあると認識が容易になる。

 

【た】

|退行【たいこう】

退行という言葉は日常的にも「子ども返り」の意味で用いられるものであるが、臨床的にはその時点でのパーソナリティ全体の発達に比べて、極端に幼児的な行動がみられる場合などに用いられる。退行に固有の症状は存在せず、さまざまなタイプのものが含まれる。

|大麻【たいま】

日本では、麻としてその繊維を利用する植物(大麻草)。大麻草の花穂や葉を乾燥させたものをマリファナと呼び、樹脂状に固めたものをハッシッシュと呼ぶ。

 

【ち】

|チック障害【ちっくしょうがい】

不随意的、突発的、急速、反復性、非律動的、常同的な運動または発声を指す。

|知能【ちのう】

新しい環境に適応するために経験によって獲得していく学習能力。積極的に環境を改良し、文化という価値を創造する思考力ないし抽象的思考力を指す。「推理、計画、問題解決、抽象思考、概念理解、学習などの精神機能」と定義されることが多く、周囲の状況を理解し、問題を設定し、それに対する解決法を考える能力である。

 

【つ】

|追想錯覚【ついそうさっかく】

過去の事実が改変されて追想されること。誤記憶あるいは記憶変容ともいう。

|ツァイトゲーバー(同調因子)【つぁいとげーばー(どうちょういんし)】

体内時計が24時間周期の環境変化サイクルのもとで、これと一定の位相関係を保ってリズムを継続することを同調と呼び、同調させる因子を同調因子(時間の手がかり:ツァイトゲーバー)と呼ぶ。

 

【て】

|テクノストレス【てくのすとれす】

アメリカの臨床心理学者Bred Cがコンピュータに関連する人々にみられる心身の病理に命名した用語。テクノ不安症とテクノ依存症の二つに分けられる。前者はコンピュータ技術についていけないという、コンピュータ不適応症である。後者はコンピュータ技術への特殊な過剰適応症である。コンピュータは思い通りに操作できる反面、手順通りでなければ作動しないという特性を持つため、対人関係においてもコンピュータに対するのと同様に、画一的で感性の乏しい自己中心的な態度をとるようになる。

|デルタ〔δ〕波【でるたは】

脳波にて記録される周波数が4Hz未満の徐波であり、成人で安静覚醒時にδ波が出現すれば明らかに異常脳波とされる。

 

【と】

|島【とう】

外側溝の奥で弁蓋に覆われた、前頭葉・頭頂葉・側頭葉のつなぎめに位置する大脳皮質の領域。

|投影【とうえい】

自己の衝動、情緒、願望などを内部に留めておくことが不快な場合に、これらを外在化し、自己とは異なる他者に属するものとして知覚する防衛機制。たとえば、自分が他者に怒りを抱いている場合、他者が自分に対して怒っていると認識するような機制である。投射とも訳される。

 

【な】

|ナーシングホーム【なーしんぐほーむ】

欧米において、高齢者のケアのために作られた居住施設。スタッフは看護師や介護スタッフが中心となる。日本では特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、老人保健施設などが該当する。

|ナルコレプシー【なるこれぷしー】

睡眠覚醒中枢の異常にもとづく狭義の過眠症の一つ。耐え難い眠気により居眠りを反復することと、情動脱力発作が中核症状。

 

【に】

|荷おろし抑うつ【におろしよくうつ】

生活状況の中で心理的負担が解消した後に発生するうつ状態をいう。大きなプロジェクトが無事に終わった後や、長年の介護から解放された後などが例として挙げられる。

|ニコチン【にこちん】

タバコの成分であり、依存を引き起こす。ニコチンには眠気のある場合には覚醒効果を、緊張している場合には静穏効果をもたらす作用があると考えられている。長期使用によって精神依存が形成され、離脱症状として深いまたは抑うつ気分、不眠、不安などが生じる。

 

【ぬ】

|ヌミノーゼ【ぬみのーぜ】

ドイツの神学者Orro Rによる、神性を意味するラテン語ヌーメン(Numen)からの造語。絶対的優越存在の前で被造者感情が生じる体験と説明される。ヌミノーゼには、「戦慄すべき秘義」「魅するもの」の2要素がある。前者は恐れや畏怖、優越、威力を含んだ驚きであり、後者は人を惹きつけ捉え、法悦に導くものであるという。したがって、宗教的体験から道徳的要素と合理的要素を差し引いた、非合理的な要素を指す。

 

【ね】

|ネオヒポクラティズム【ねおひぽくらてぃずむ】

自然治癒力の科学的解明と治療的応用をめざす医学思想。近現代医学の発病研究(病因・危険因子の発見・検出、発病メカニズムの解明)一辺倒に対して、回復研究(回復因子の発見、回復メカニズムの解明)の重要性を強調。

|ネクロフィリア(死体性愛)【ねくろふぃりあ(したいせいあい)】

死体に対する性愛で、死体愛、死体愛好症、屍姦ともいう。具体的には、死体を眺める、愛撫・接吻する、添い寝するなどのフェティシズム的行為から、性交、損壊、肉片や血液の摂取というカニバリズムに至るまでさまざまである。

 

【の】

|脳幹症候群【のうかんしょうこうぐん】

脳幹(中脳、橋、延髄)の損傷によって生じる症候群。

|脳局在論【のうきょくざいろん】

さまざまな心的機能が脳の一定の部位に局在すると考える立場。

|脳挫傷【のうざしょう】

頭部外傷の急性期症状の1型で、頭部を強打するなどの要因によっておこる脳実質の挫滅、小出血や浮腫などの器質的障害。

|脳死【のうし】

大脳および脳幹を含む脳機能が喪失し、回復不可能な状態。

|脳波【のうは】

脳波の種類は、周波数の高さによって8種類に分けられる。低いものから順に、δ(デルタ)波、θ(シータ)波、α(アルファ)波、中間速波、β(ベータ)波、γ(ガンマ)波、棘(きょく)波、鋭(えい)波。

 

【は】

|バウムテスト【ばうむてすと】

投影法の一種。樹木画とも呼ばれるように、白紙に描かれた一本の樹について分析し、解釈する方法。

|八ヵ月不安【はっかげつふあん】

Spitz RAが提唱した、乳児にみられる情緒反応を記述する用語。乳児は一般に、生後3~4ヶ月ごろには誰を見ても微笑む、身を乗り出すなどの肯定的な表情や態度をみせる(無差別微笑期)が、生後5~10ヶ月ごろになると見知らぬ人間(見慣れぬ顔の持ち主)に対して泣く、顔を背ける、目を伏せるなどの否定的反応を示すようになる。Spitzは、この否定的反応が生後8ヶ月ごろにピークに達するとして、この人見知り反応を“八ヵ月不安”と名付けた。

 

【ひ】

|ひきこもり【ひきこもり】

不登校や就労の失敗などをきっかけに、長期間自宅に閉じこもりがちになっている青少年の状態象を指す。定義には複数あるが、①6ヶ月以上にわたって社会参加(就学・就労、あるいは家族以外の親密な対人関係)がなく、②基礎疾患がない点は共通している。

|ピクノレプシー【ぴくのれぷしー】

てんかん症候群の国際分類における全般性てんかん-特発性てんかん-小児欠神てんかんと同義。典型的には小児~学童期(4~14歳、特に5~7歳)に発症する。突然意識がなくなり、数秒~数十秒続いて再び意識が戻る欠伸発作を、日に数十回以上にわたって頻発することもある。

 

【ふ】

|ファミリーロマンス【ふぁみりーろまんす】

Fred Sによって作られた表現で、子どもや神経症者が両親との関係を想像上で変更する一連の幻想を指す。たとえば、「自分は捨て子だった」「本当の両親は別にいるはず」などと想像し、空想の物語を作る。家族空想、家族小説という場合もある。

|ファントム空間【ふぁんとむくうかん】

正常人の、他人や物事への一般理解の公式としての正常<パターン>公理(記号表現としてA≧B)、および統合失調症(分裂病)事態にのみ通用する特殊公理(A<B)について説明するのが<パターン><パターン逆転>であるが、ファントム空間論は、その具体的諸面にわたり、図式化を介しつつ、説明する理論である。

|ブレインバンク【ぶれいんばんく】

人の死後、脳を体系的に収集・保存し、研究者に利用しやすい形で提供する仕組み。精神疾患の原因解明のためには脳の分子細胞レベルでの研究が必要であり、死後の脳を収集できる施設と最先端の神経科学研究を行う施設の連携を促すことによって研究が促進されることから、ブレインバンクの設立は精神神経疾患のために必須となっている。

 

【へ】

|β波【べーたは】

α帯域(8~13Hz)よりも高い周波数帯域、すなわち14Hz以上の周波数を有する脳波を指す。

|PET【ぺっと】

Positron emission tomography(陽電子放射断層撮像法)の略。さまざまな化合物を標識可能で、神経伝達機能や脳血流代謝を定量するのに適している。

 

【ほ】

|放火癖【ほうかへき】

金銭的利益や復讐、犯罪行為の隠蔽など火災がもたらす効果を目的とする放火と異なり、炎上やそれに付随する消火活動の光景を体験するために故意に繰り返される放火。

|保持【ほじ】

符号化された情報を後で想起できるような状態に留めておく機能を意味する。把持ともいう。「覚える→覚えておく→思い出す」という一連の記憶の処理過程を表すために、情報処理プロセスに着目した「符号化→貯蔵→検索」という用語や、主体の心理プロセスに着目した「記銘→保持→想起」という用語が用いられる。

 

【ま】

|マインドフルネス【まいんどふるねす】

1979年にKabat-Zinn Jによってマサチューセッツ大学医学部にストレス低減プログラムとして創始された瞑想とヨガを基本とした治療法。慢性疼痛、心身症、摂食障害、不安障害、感情障害などが対象となる。

|マゾヒズム【まぞひずむ】

小説で被虐性を描いた19世紀オーストリアの作家Sacher-MasochにちなんでKrafft-Ebing R vonが命名した。苦痛を与えることで性的に興奮するサディズムと一語にしてサド-マゾヒズムとも呼ばれる。

 

【み】

|ミュンヒハウゼン症候群【みゅんひはうぜんしょうこうぐん】

1951年にAsher Rが報告した、身体症状を自ら産出し、症状や生活史の説明は劇的で虚偽が多く、多くの病院を転々とすることを特徴とする症候群。ホラ吹き男爵と呼ばれるミュンヒハウゼン男爵にちなんで名づけられたが、他にもアッシャー症候群、病院放浪者などとも呼ばれている。病者の役割を演じることが目的であり、現実的な利得を求める詐病とは区別される。

|ミラーニューロン【みらーにゅーろん】

自らがある動作を行うときに活動するだけでなく、他者がその動作や類似した動作を行うのを自分が観察するときにも活動する特性を持った神経細胞。

 

【む】

|夢幻症【むげんしょう】

正常人の夢に似た病的意識状態がみられ、幻覚、とりわけ幻視が情景をなして展開する精神異常を指し、ドイツ流の疾患単位の考え方の希薄なフランスで用いられた概念。

|無言症【むごんしょう】

構音や発生にかかわる筋に麻痺がなく、失語症でないにもかかわらず喋らない現象。緘黙症ともいう。

 

【め】

|滅裂思考【めつれつしこう】

思考過程(思路)全体の論理的連関と統一性が失われた状態。

|メラトニン【めらとにん】

脳の松果体などでセロトニンから合成されるホルモン。夜間に分泌され、血中濃度は暗期の中点で最高レベルに達し、夜明けには低下する。

 

【も】

|妄覚【もうかく】

錯覚、パレイドリア、幻覚、偽幻覚などを一括する誤った知覚の総称。

|妄想気分【もうそうきぶん】

周囲に何ごとかが起こっているような無気味な感じ、あるいは何ものかに脅かされているというような、外界の変容感を伴った特有の不安緊迫感。

 

【や】

|薬物依存【やくぶついぞん】

薬物乱用の繰り返しの結果に生まれる、薬物使用に対する自己コントロールを失った状態。

|山あらしジレンマ【やまあらしじれんま】

人と人との間の心理的距離をめぐるアンビヴァレンスを、Schopenhauer Aの寓話から喩を得て表した精神分析用語。寓話の内容は、「寒い冬の日、山あらしたちが寄り添って温め合おうとしたが互いの棘で刺してしまうので、離れたり近づいたりするうちに棘の痛みを我慢できる適切な距離をみつけた」というもの。Freud Sはこの葛藤を、距離が近くなればなるほど相手が自己愛の対象となって些細な違いに敏感になり、自他の差異に対する寛容度が下がって憎しみが募るというアンビヴァレンスとして説明した。

 

【ゆ】

|有害事象【ゆうがいじしょう】

医薬品を服用している患者に生じたあらゆる好ましくない出来事であり、医薬品との因果関係の有無は問わない。

|夕暮れ症候群〔たそがれ症候群〕【ゆうぐれしょうこうぐん】

夕刻になり、精神的に過敏で不安定な状態になる現象。認知症の症例に多い。

 

【よ】

|幼稚症【ようちしょう】

解離性障害や催眠などにみられる成人の幼稚で退行した行動を意味し、わざと子どもっぽい態度をとっているようにみえる。捕虜や拘留などの状況でみられることがある。

|予防精神医学【よぼうせいしんいがく】

メンタルヘルス概念とともに重視されるようになった精神の不健康予防を中心にする精神医学の一分野。

 

【ら】

|ライシャワー事件【らいしゃわーじけん】

1964年(昭和39年)3月24日、当時の駐日アメリカ大使ライシャワー氏が19歳の日本人青年に大腿部を刺され重傷を負った事件。犯行の動機は外交問題とは無縁な妄想に基づくもので、青年は精神鑑定で統合失調症と診断され、不起訴となって入院した。

|λ波【らむだは】

単相性、三角形の陽性鋭波で、覚醒時に模様や図形を見たときや、衝動性眼球運動時にみられる。

 

【り】

|力動精神医学【りきどうせいしんいがく】

人間の精神現象を、生物・心理・社会的な諸力による因果関係の結果として理解することを方法論的な基礎とする精神医学。

|理想化【りそうか】

自己または対象を完全無欠で絶対的な存在として認識すること。

 

【る】

|類催眠ヒステリー【るいさいみんひすてりー】

1894年から1895年ごろにBreuer JとFreud Sが提唱した用語で、類催眠状態に起源をもつヒステリーのこと。

|類てんかん性格【るいてんかんせいかく】

てんかん患者には生来的に一定の性格特徴をもつとの歴史的な見解に基づく用語。

 

【れ】

|例外状態【れいがいじょうたい】

急性に発症するがすぐに消退する一過性の活発な症状を伴う精神病象の総称。

|レジリアンス【れじりあんす】

発病の誘因となる出来事、環境、病気そのものに抗い、跳ね返し、克服する復元力や回復力を指す。

 

【ろ】

|ロイコジストロフィー【ろいこじすとろふぃー】

白質変性症とも呼ばれ、髄鞘崩壊を主とする大脳白質の広汎な変性をきたす、いくつかの遺伝性疾患の総称。

|老化【ろうか】

「年齢を重ねるにつれて、身体のあちこちの細胞が傷ついて本来の働きをしなくなり、細胞の再生力も弱くなる」現象。原因ははっきりとは解明されていないが、プログラム仮説、エラー仮説、活性酸素仮説などが知られている。細胞には分裂できる限界が設定されており、その回数を越えて分裂ができなくなることにより老化が発生するという説がプログラム仮説であり、細胞分裂の際に少しずつ生じる突然変異が徐々に蓄積されていき、最終的に破綻するという説がエラー仮説である。活性酸素仮説は、代謝によってミトコンドリアなどから産生される活性酸素によるダメージによって老化が進行するという説である。

|露出症【ろしゅつしょう】

自分の性器や裸体を、そのことを予測していない人物の眼前で露出することに強烈な性的興奮や性的衝動を覚える性倒錯の一型。この性衝動によって露出行為を行うと、公然わいせつ罪などの犯罪に該当する。

 

【わ】

|わが道を行く行動【わがみちをいくこうどう】

ピック病を中核とする前頭側頭葉変性症の主要な症状として、田邉敬貴らが指摘した。社会的な関係や周囲への配慮がまったくみられず、気の向くままに行動することを指す。たとえば、大企業の重役が店頭で堂々と万引きし、それを指摘されても悪びれた様子がみられないなど。

|わざとらしさ【わざとらしさ】

マンネリズムの訳語。目標志向性運動の途中に、必要でない無意味な動作が挿入されることをいう。たとえば、靴を履くときにいったん下肢を大きく前に振り上げてから下ろして靴に入れる等。

(出典・参考:弘文堂「現代精神医学事典」)
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