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今日からできる! ストレスを打ち消すための食事と運動

 『ストレス社会』といわれる昨今。学生や社会人、専業主婦を問わず、多くの人にとってストレスの解消は大きな関心事といえます。ここでは、そんなストレスを打ち消すための食事や運動、睡眠についてご紹介します。

1.ストレスが溜まることで生じる症状


 ストレスが溜まると、以下のような症状がみられます。

・免疫力が低下し、胃潰瘍や高血圧、糖尿病などの病気にかかりやすくなる。
・よく眠れなくなり、常に眠気を感じるようになる。
・呼吸が浅くなり、疲れやすくなる。
・無気力になり、学業や仕事、私生活に悪影響が現れる。
・必要以上に快楽を求め、買い物やタバコ、アルコール、薬物などの依存症になる。

 このような症状を防ぐためにも、ストレスの解消は重要となります。

 脳には、ストレスを制御するための機能があります。この機能は、脳内の『セロトニン神経』が活性化することで高まります。セロトニン神経は、食事、運動、そして睡眠を工夫することによって活性化させることができます。なお、セロトニン神経が活性化することで、うつ病やパニック障害といった精神的な病気を患いにくくなるだけでなく、物理的な痛みにも強くなることが分かっています。つまり、セロトニン神経が活発化することで、心身両方のストレスを受け流せるようになります。

2.寝起きが大切


 神経伝達物質であるセロトニンは朝につくられるので、セロトニン神経を活性化させるためには朝の過ごし方が重要です。セロトニンを活性化させるためには、朝の太陽光を浴びることが効果的。

 セロトニン神経は、網膜から入った光信号の影響を受けます。セロトニン神経を活性化させるためには、光の強さが2,500~3,500ルクスほどである必要があります。一般的な電灯の光は100~200ルクス、明るい電灯でも500ルクス程度。これに対して太陽光は、曇りの日でも10,000ルクス、晴天であれば30,000~100,000ルクス程度。室内でもカーテンを開ければ2,500~3,000ルクス程度の太陽光が入るので、朝起きたらカーテンや雨戸を開けて、太陽光を取り込みましょう。

 時間は30分程度。あまり浴びすぎると、セロトニン神経の自己抑制機能が働いてしまい逆効果となるので注意が必要です。

3. ストレスを打ち消す食事


 セロトニン神経は、必須アミノ酸の一種である『トリプトファン』をもとにして神経伝達物質であるセロトニンを合成します。トリプトファンなどの必須アミノ酸は体内では合成されにくいため、食事で摂取する必要があります。

■セロトニンを活性化させる食材


 セロトニンの量を増やすためには、トリプトファンの他にもビタミンB6や炭水化物を摂取する必要があります。ビタミンB6はトリプトファンとともにセロトニンを合成し、炭水化物はトリプトファンを脳内に運んで吸収を助け、セロトニン神経の働きを活発にします。つまり、トリプトファン、ビタミンB6、炭水化物の3つの栄養素を摂取することでセロトニン神経が活性化し、効果的なストレスの軽減や解消につながります。

◆トリプトファンを含む食材


・大豆製品(豆腐・納豆・みそ・しょうゆ・枝豆・豆乳・きなこ)
・乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズ)
・鶏卵
・魚卵(タラコ・スジコ・明太子)
・カツオ節
・ゴマ・ナッツ
・アボカド
・バナナ

 トリプトファンは、たんぱく質に含まれています。なお、肉類の動物性たんぱく質はトリプトファンが脳に取り込まれるのを阻害する役割を果たすため、セロトニンを活性させるためには摂取を控え目にすることが望ましいといえます。

◆ビタミンB6を多く含む食材


・魚類(サケ・サンマ・イワシ・マグロ・カツオ・サバ)
・バナナ
・にんにく・しょうが
・未精製の穀類(玄米・胚芽パン)
・豆類(大豆・ヒヨコ豆・レンズ豆)

 セロトニンを体内で合成するために必要とされるビタミンB6。魚類などに多く含まれるのが特徴です。肉よりも魚のほうがビタミンB6を多く含んでいるため、トリプトファンやビタミンB6を効果的に摂取するためには、魚から摂取することが望ましいといえます。

◆炭水化物を多く含む食材


・穀類(ごはん・めん類・パン)
・いも類
・くだもの

 脳内でセロトニン神経のエネルギーとなるのが炭水化物。米やパン、めん類などから摂取できます。なお、バナナは果物の中でも特に多くの炭水化物を含んでいます。バナナはトリプトファンやビタミンB6、炭水化物が豊富であり、バナナだけでセロトニンをつくる3つの栄養素のすべてが摂取できます。

■お手軽献立(洋食編)


 『朝はパン派』という人におすすめの献立が、パン、牛乳、たまごを使ったフレンチトースト。

 つくりかたは簡単。牛乳・卵・砂糖をよくかき混ぜて食パンにしみ込ませ、オリーブオイルをしいたフライパンで両面を焼くだけ。

 バナナを加えると、さらに効果的に。

 バナナを加えることで、トリプトファン・ビタミンB6・炭水化物をバランスよく摂取することができます。なお、バナナは炒めると香りや甘みが強くなるので、バナナの香りや甘みが苦手な人はデザートとしてそのまま食べるのがおすすめです。

 トーストには、牛乳や豆乳もご一緒に。

 デザートとして、果物やヨーグルトをそえるとさらに充実した朝食に。

■お手軽献立(和食編)


 『朝は和食がいい』という人には、ご飯と納豆の組み合わせがおすすめです。

 ご飯と納豆の二品だけで、トリプトファンとビタミンB6、炭水化物をバランスよく摂取することができます。さらに栄養ある朝食にしたい場合は、納豆には卵を混ぜ、お味噌汁にも卵を入れると良いでしょう。お味噌汁の具にはじゃがいもや豆腐などが理想です。

 朝から時間や手間をかけたくないという人は、高栄養価で一切の手間をかけない究極の一品、『卵かけごはん』がおすすめです。

 卵に火を通さないので、卵が持つ栄養素を全く損なわせることなく摂取することができます。ご飯の炭水化物と卵のトリプトファンで、セロトニン効果ばつぐんです。

・夕食に摂りたい人は

 夕食でしっかりと栄養を摂取したいのであれば、冷奴を一品そえましょう。

 かつお節にはトリプトファンとビタミンB6の両方が含まれているので、たっぷりとかけましょう。

 もっと贅沢にビタミンB6を摂取したいという人は、マグロのお刺身はいかがでしょう。

 かつおのたたきも効果ばつぐんです。

 豆腐やお刺身であれば、調理の手間なく簡単に食卓に並べることができるので、忙しい人でも無理なく続けることができます。


 洋食派の人も和食派の人も、必要な栄養素を工夫しだいで毎日簡単に摂取することができます。簡単に手に入る食材が多いので、今日からはじめることができます。なお、食べる際には『よく噛む』ということを意識しましょう。セロトニン神経は『よく噛む』という“リズム運動”によっても活性化されます。朝ごはんを食べた場合とそうでない場合に日中の集中力が異なるのは、摂取した栄養価だけでなく、噛むというリズム運動によって脳が活性化したことも要因となっています。

4.ストレスを打ち消す運動


 セロトニン神経を活性化させるためには、リズム運動が効果的です。また、太陽光を浴びることでセロトニン神経が活性化することから、太陽光を浴びながらのリズム運動がより効果的となります。

 最も効果的にセロトニン神経を活性化させるのは、太陽光を30分程度浴びながらの運動です。朝起きたら部屋の中に太陽光を取り込み、家の近くを散歩すると良いでしょう。散歩をする時間がない人は、通勤・通学のときに太陽光の当たる場所を選んで歩くようにしましょう。歩く速度は、早すぎず遅すぎず、時速5~6kmが理想です。

 休日であれば、太陽光を浴びながらのジョギングやサイクリングも効果的です。

 なお、過度な運動は体に負担をかけることになるのでNGです。また、運動中に考え事をして言語脳が活発に作用すると、セロトニン神経の活性化にはつながらないため注意が必要です。音楽を聴きながら運動するのであれば、歌詞のない曲がおすすめです。

5.ストレスを打ち消す睡眠


 栄養のある食事を摂って適度な運動をした後は、たっぷりと睡眠をとることが大切です。
 太陽が沈み、周囲が暗くなると眠気を誘うホルモンである『メラトニン』が分泌されます。メラトニンはセロトニンをもとにつくられるので、日中にセロトニンがつくられていないと不眠になってしまうケースもあります。メラトニンが豊富な睡眠をとるためには、日中に太陽光やリズム運動によってしっかりとセロトニン神経を活性化させておくことが大切です。
 なお、メラトニンにはアンチエイジングの効果もあります。メラトニンは抗酸化物質のひとつで、日中の活動で発生してしまう悪玉物質である『活性酸素』を処理する役割を果たします。そのため、メラトニンが豊富な睡眠は、心身の健全を実現するために不可欠であるといえます。

6.まずは、3ヶ月


 セロトニン神経の構造は食事や運動によって変化し、そうした生活習慣が3ヶ月ほど継続されることで固定化されるようになります。セロトニン神経を活性化させるための食事や運動、そして睡眠の効果を実感するには、一定期間に渡って継続することが大切です。

 セロトニン神経を活性化させるために大切なのは、“長時間”続けることではなく“長期間”続けること。無理のない範囲で、必要な栄養素が摂取できる食事と、摂取した栄養素を活かす運動、そして睡眠を心がけることで、セロトニン神経を活性化させ、ストレスを打ち消すことができます。

 毎日の生活を一工夫して、毎日の生活をより快適に、充実したものにしましょう。

◇参考文献
●『脳からストレスをスッキリ消す事典』(PHP)
●『脳からストレスを消す技術』(サンマーク文庫)