コラム

よくわかる心理学講座 vol.17~成人期の人間関係を決める 乳児期の「愛着(アタッチメント)理論」~

 子どものころに経験した親との愛着関係は、大人へと成長してからの人間関係に大きく影響を与えます。中でも、交際相手や結婚相手との関わりの基礎をつくることになります。イギリスの精神科医であるジョン・ボウルビィは、乳児期での親との結びつきが成人期の愛着関係を左右するという愛着(アタッチメント)理論を提唱しました。

4つの結びつき


 子どもの頃の親との関わり方は、大きく4つに分類することができます。そして、その4つの関わり方は、それぞれ大人になってから交際相手や結婚相手とどのような人間関係を結ぶかを決定づけるとボウルビィは考えました。

乳児期:安定型 ⇒ 成人期:安定型

 自分の要求を満たしてもらえると確信している子どもは、安定型と呼ばれる愛着スタイルを育みます。親は子どもの要求に敏感で、すばやく対応します。子どもは自分の要求を満たされることで、安心感を抱きます。
 安定型で育った子どもが大人になると、交際相手や結婚相手を信頼し、相手を支えることや助けを求めることをいとわなくなります。精神的に自立しており、相手への愛情にあふれています。

乳児期:葛藤型 ⇒ 成人期:不安・とらわれ型

 親が要求を満たしてくれる場合とそうでない場合とがあり、子どもは心が安定せず、不安や怒りをいだきます。
 葛藤型で育った子どもが大人になると、交際相手や結婚相手から拒絶されることを常に恐れるようになり、まとわりつくようになります。また、相手に対する要求が過大となり、場合によって強迫症患者と似た状態となります。恋愛関係は真の愛や信頼ではなく、精神的な飢えによるものとなります。

乳児期:回避型 ⇒ 成人期:拒絶・回避型

 親から距離を置かれ、要求を満たされない子どもは、自分の要求が満たされることはないと意識下で感じるようになり、精神的に他者と距離をとるようになります。
 回避型で育った子どもが大人になると、他者と精神的に距離をとっているせいで、一見すると自分のことに集中し、自立しているようにもみえます。交際相手や結婚相手が別れ話を切り出すと、気にかけるそぶりを見せないこともあります。

乳児期:無秩序型 ⇒ 恐れ・回避型

 親の予測不能な言動や行動によって怯えている子どもは、自分の要求が満たされることのないまま、心を閉ざして周囲に関心を示さなくなり、混乱を深めていきます。
 無秩序型で育った子どもが大人になると、態度が極端から極端へと揺れ動きます。どのような感情をみせるかが予測できず、暴力的な行動がみらえることもあります。交際相手や結婚相手に安心感を求める気持ちと、相手に近づきすぎて傷つくのを恐れる気持ちとの間で引き裂かれます。

最も愛着関係を築くべき時期って?


 ボウルビィによれば、ヒトは誰もが生きるために愛着関係を築く本能的欲求を持って生まれてきます。そして、生まれてからの2年間、特定の相手と親密で途切れることのない結びつきを必要としています。この時期に結びつきをつくれない場合、抑うつや攻撃性の高まり、知能の発達に悪影響が生じる可能性があるといわれています。このことから、生後2年ほどは特に愛着関係を築くべき時期といえます。なお、その後の研究によれば、愛着関係に大切なのは食事などの世話をする関係以上に、遊び相手になる関係といわれています。

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