コラム

よくわかる心理学講座 vol.4~戦争の原因にもなる「ナショナリズム」って?~

 「ナショナリズム」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、歴史や言葉、領土や文化を共有する人たちが抱く帰属意識のことです。「誇り」と言い換えることもできます。自分の国や民族に対する誇りは、ときに自らの繁栄を実現し、そしてときに相手方の破壊をもたらします。

小さな違いが大きな戦争を生むまで


 「ナショナリズム」は、穏やかなものであれば人びとがまとまり、連帯意識や協調性を生み出して国を発展させます。しかし、ナショナリズムが行き過ぎると暴力や民族紛争を引き起こします。

 ヒトは、どこかに所属することを心理的に好む生き物です。また、自分が所属している以外の団体・組織に対して敵対心を抱くことも多くあります。これが行き過ぎることで、自分たちの中で「正義」と「悪」を区別するようになります。たとえ国家や民族の違いが小さなものであっても、さまざまな条件が重なりあうことでやがて大きな戦争や紛争になることがあります。

1.分裂の火種

 多くの社会には、少なからず政治的・宗教的な違いを持った集団が存在しています。こうした違いは、政治や経済が不安定なときに明確になり、やがて「内集団(味方)」と「外集団(敵)」を区別するきっかけとなります。

2.社会の分裂

 政治的・宗教的、もしくは経済的、文化的な違いから内集団と外集団の区別がおこなわれるようになります。ここで政治的な利用者がこれらを利用し始めると、ふたつの集団が敵対関係になり、国内での内戦や、外国との戦争を引き起こすことになります。

3.外集団のステレオタイプ(キャラクター)化

 外集団の人間性を認めなくなり、真実から目を背けて外集団である“敵”を個性のないひとつの悪の集団として捉えるようになります。実際に会ったこともない相手を「悪い奴に決まっている」と信じ、憎悪や差別の対象となります。

4.外集団への責任転嫁と排除

 内集団である自分たちの、外集団に対する行い(=誹謗中傷や暴力行為など)の責任を外集団にかぶせるようになります。自分たちの正義を信じ、悪は相手だと認識することで誹謗中傷や暴力行為が激化していきます。場合によっては相手を徹底的に排除しようとすることもあります。

テロリズムもナショナリズムが原因?


 特定の宗教や理念を正義とし、それ以外を悪として破壊活動をおこなうという点ではナショナリズムが原因のひとつと考えられます。なお、多くの戦争が国と国の間で行われるのに対して、現在の国際社会でみられるテロリズムの多くは宗教が原因となっています。特定の理念をもったテロリスト集団が、さまざまな国で破壊行為におよんでいます。時代が進むにつれて大規模な戦争は無くなりつつありますが、世界に文化や宗教、民族や国家がある限り、テロリズムが完全に無くなることは難しいかもしれません。

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